第9話「やり抜くモチベーションは、やる事へのイマジネーションから。」

 「ぼくは片づけ心理小説を書いて、芥川賞をとる。」


 毎日、何度もこの言葉を目にするたびに、ぼくの信念は強化される。新型コロナウイルス騒動で世間では不安や恐れが蔓延しているが、そんな時こそ大切にしたいのが『セルフイメージ』だ。


 今日は近所のインドカレー屋で、Bランチ辛口が出てくるのを待ちながら、執筆を開始する。酸いも甘いも辛いも、大好きなのが伊藤勇司だ。


 しばらく執筆が空いていたが、優先順位を改めて見直していた。そして、毎日執筆が習慣化できるように、スケジュールを組み直す。日々自分の行動を見つめ直しながら、過ごし方を変え続けることで、それが可能になる。


 そして、想定外の出来事が起きたときほど、想定内を増やすチャンス。生きていれば予想もできないことは沢山起こる。だからこそ、起きてしまったことを踏まえて、これからどうすべきかを考えていくことが重要だ。


 「いらっしゃいまーせー」


 インド人店長の独特の挨拶が、店内にこだまする。次々に、ランチタイムの客が押し寄せている。そうこうするうちに、早くもBランチが届いた。セットドリンクのラッシーも、併せて到着する。


 「いらっしゃいまーせー」


 学生の女の子と思われる二人組が、店内に入ってきた。あと一席で満員。ぼくの隣のテーブルだ。


 「こちらー、どーぞー。」

 

 店員が案内をした次の瞬間。


 「ガッシャーン!!!」


 と、勢いよくコップが割れる音がした。それは、ぼくのラッシーだった。二人組の女の子が席に着く際に、一人が背負っていたカバンがラッシーに衝突した。満タンに入ったラッシーは、ぼくの黒パンツめがけて落ちていく。こんな時に限って、白いラッシーの汚れが目立つ、黒パンツにだ。

 

 「すっ、すいませーーん!!!」

 

 申し訳なさそうに謝る学生の女の子に対して、ぼくはいたって冷静に対処した。


 「大丈夫ですよ。」


 (こぼした相手が、伊藤勇司で良かったですね。)と、心で唱えていると、店員も慌ててテーブルにやってきた。


 自分の身に何かが起きた時ほど、人間性が問われるものだ。そんな時に大切にしていることは『相手に運を与える関わりをすること』である。伊藤勇司にとってはアンラッキーな出来事かもしれないが、自分の対応次第で、やってしまった相手は『いい人で良かった・・・』と、見えない運と安心感をゲットすることもできる。


 こうした何気ない積み重ねが、徳となって後に返ってくると信じている。


 気がつけばインドカレー屋のくだりで、1000文字を超えてしまったことに気づきながら、今日の本題に入っていこう。もしかしたらこのエピソードも、将来小説の役に立つかもしれない。


 前回は小説家の先生方との出逢いを書いたのだが、とても刺激的な話の数々だった。文章を書く上で、何を意識しているのか。各先生方がまだ無名の頃に、各出版社が主催する小説新人賞に応募した時の話。


 全てがぼくにとっては、新鮮で学びになる話ばかりだった。それと同時に、改めて気づくこともある。小説家の先生も、最初は普通の人からスタートしているということだ。


 会社勤めをしながら、小説を書き続けていたり。主婦をしながら小説を書いてみたり。子供と遊ぶ合間をぬって、少しづつ小説を書くことからスタートしていたり。


 みんな、それぞれ、できることからスタートして、今日に至っている。今やれることを、文章に綴って書き続けていく。やはりこれが大切なんだ。辛口のインドカレーで上昇する体温と、文章を書きながら高まっていく想いの熱量が絶妙にマッチする。


 実は今、新作の実用書の原稿が大詰めである。それもあって、小説の更新が滞っていたが、何があっても毎日更新できる自分を築き上げていくことは重要だ。改めてスケジューリングを見直して、行動レベルを高めていこう。


 物事を完遂するためには、モチベーションは重要である。そしてそのモチベーションは、気持ちで高めていくよりも『未来のイマジネーション』を具体的にすることによって、自然に高まっていく。

 

 今日の1話が、未来の1冊に繋がっていく。今日の1話を執筆する能力が、未来の小説の執筆能力に繋がっていく。今日の1話を執筆することが、未来の読者の喜びに繋がっていく。


 そうやって、今やっていることの意味を、未来のイメージにリンクさせていく。人生で起きるすべての出来事は、未来のイメージにリンクさせていくことで全てがエベルギーとなる。無論、ラッシー事件もだ。


 9割がたインドカレー屋のネタに終始してしまったが、それもまた良いだろう。小説には、伏線がつきものだ。一見意味がないような出来事が、物語終盤の謎解き必要な要素であることは多い。今回の9話が、まさにそうなるかもしれないのだから。

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