第2話「やると決めたら、できた未来を具体化する。」
「ぼくは片づけ心理小説を書いて、芥川賞をとる。」
そう明確に心に決めた後にすぐ実行したことは、それができた後に起こっている現象の具体化である。
なることを目指すのではなく、なった後に起こっていることを可能な限りイメージする。さらに連想ゲームのようにイメージを派生させていく。求める結果が実現した時の未来の周辺情報を先に明らかにしていくと、今日からやるべきことの質が変わってくるのだ。
そこで見えてきたイメージを基にしながら、パズルのピースを埋めていく。求める未来を構成する要素の中で、今日からのレベルですぐに実行できることは、小さなことでも今すぐに形にするのだ。これは、片づけの概念を元にした夢実現の発想である。
今日の第2話を執筆する上で選んだ場所は、大阪の京橋にある「COCARDE」というカフェ。はみ出しそうなボリュームの厚焼き玉子サンドイッチを、豪快に食べながら執筆の準備をする。ここは、PHP研究所で手がけた本の執筆の際に初顔合わせとしても利用していた思い出の場所だ。
空間心理カウンセラーとして活動を始めて11年が過ぎていったが、その活動の中でよく誤解されることは、片づけが好きだからこの仕事をしていると思われていることだ。
これから素性を語る上で、ここは最初にはっきりとさせておきたいことだが、ぼくは未だに片づけが好きではない。そしてこれからも好きになることはないだろう。
逆説的な発想かもしれないが、片づけが好きじゃないから、片づけが苦手な人の気持ちが痛いほどわかるし、片づけ嫌いな人に響く本が書けるのだ。「あなたの部屋が汚いのは、才能がありすぎるから」という本も、綺麗好きの人間からは想像すら不可能な発想であることは間違いない。
そんな片づけ嫌いの伊藤勇司が、片づけ業界で仕事が続いている1番の理由は、片づけの概念が人間のポテンシャルを最大化するために非常に効果的であることを発見したからだった。
伊藤勇司という人間は、万物のポテンシャルを最大化することに興味があり、そのことを追求するあくなき探究心が生きる原動力になっている。
片づけに魅力を感じているのではなく、片づけの概念を通して人間のポテンシャルが最大化されることに魅力を感じている。このニュアンスの違いは重要だ。
今の仕事の前進になっていたのは、引越屋で働いていた経験が元になっていた。そして、同時期に日本メンタルヘルス協会という心理学スクールで勉強していたことも欠かせないエッセンスだ。この引越屋で働いていた経験と、心理学を学んでいた経験が融合して、空間心理カウンセラーは誕生したのである。
今日、「COCARDE」で執筆をしているのは、その原点の気持ちを今一度思い出す理由もあった。PHP研究所は、心理学を教えてくださった衛藤信之先生の処女作「心時代の夜明け」を手がけた出版社でもある。
師匠から学んだものが活かされて、師匠と同じ出版社で独自の作品を形にできている。そうやって常に自分が歩んできた道を確認し続けることが、未来の確かな道標となる。
「I love you, because you are you.」
この言葉を心理学講座で聞いたことによって、心震える感動をした当時の記憶は、今も色褪せることはない。そして、ぼくが小説を書く理由も、ここに集約されている。誰の人生も、尊いものであることを小説を通して表現していきたいのだ。
そうやって自分の内側から湧き上がる想いを確認すると、今まさに第2話に込めていく熱量も変わっていった。だが、その熱い想いとは裏腹に、コーヒーは見事に冷めている。集中すると没頭してまうのは、いつものことだ。
これは第1話を書きながら思ったことだが、小説を書くという意識になると、日常で起きてる現象に繊細になることに気づく。物語がリアルに伝わるように描写しようと思ったら、一つ一つの現象を丁寧に説明したくなる。
さらに、このカクヨムがリアルタイムで反応がわかるWEB媒体だからこそ、今まさに第1話の内容に対して、初めてコメントが入ったことが通知された。その内容も気になって仕方がない。
合わせてFacebookでも、「これは小説なのか?と思いましたが、今後どのように展開していくのか楽しみにしています。」というコメントが入っていたことに気づいた。そう、よく考えてみたらこの文体は確かに小説なのだろうか。
気になったぼくは、google先生で小説の定義を検索してみた。すると、コンマ数秒のレスポンスで意味が出現する。
「作者の構想を通じて、人物や事件、人間社会を描き出そうとする、話の筋をもった散文体の作品。」
この意味から察すると、これは一応小説と呼んでも良いのではないだろうか。ただ、こうしていつまでも周りの反応を気にしていくと、話は面白いように脱線していく。人はこうして迷走していくのだと、文章を通して見せつけられているようだ。何よりも、こうした行動パターンと思考回路になるのが散らかる人間の典型的な特徴である。
思考の寄り道をしてしまったぼくは、改めて話を戻すことにした。
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