(34)天上の光
「ぎゃぁぁあああああ」
地上から十メートル程の位置に達した時、星の一つが
全く理解の
「くっ、何奴だ」
ハバリートが
「貴方にこれ以上、大切なものを奪わせはしません」
彼女はいつもと同じように、
先刻、全ての力を振り絞って守り、その気を全て振り払った内田がそこにいる。司書の剣の呪いは去ったのか、彼女を覆っていた
ハバリートが身体を起こし、地上を後にする。
「ほう、あの呪いを脱したか。しかし、脱してしまった貴様の力では、到底、我が力には
上空で
「この星の祈りを天上より捧げよ。落雷」
内田の
「よもや、同じ相手に二度の
ハバリートが憎々しげに言い残し、天空高くへと消えた。後には、大地に突き刺さる司書の剣。そして、穏やかに私を見下ろす内田だけが残された。
「博貴、
「これで無事なら、私は人間を辞めてるさ。それより、内田、今のは」
私の問いに答えるより早く、内田は私の
「ええ、
「先程って、内田の技令の気は陰で風技令が基本なんだろ。第一、さっきの戦闘で内田の技力も体力も空にしてしまった。技令なんて、否、そもそも動くことすらままならないはずだ」
それがどんな手品を使ったのか、二回も陽の技令でも高位な
「技力も体力も司書の塔のお
そう言いながら、内田は黄色の技石を私の頭上に掲げる。それだけで、先程受けた深い傷が回復し、身体に力が
「雷技令が使えるようになった理由は分かりません。ただ、司書の剣に支配された後、博貴の陣形技令に刺激されたか、もしくは支配によって前世の記憶が蘇ったかしたために、使えるようになったのではないかと思います。
内田の表情はいつになく穏やかだ。この
それが、
「しかし、申し訳ございませんでした。私の思い上がりのせいで博貴をはじめ、多くの方々にご迷惑をおかけしてしまいました」
「いや、別に気にする必要はないさ。問題があるのはこんなシステムを取り入れた司書の塔が悪いんだ。それに、内田の怒りも分からないでもない。だから、別に気落ちする必要はないさ。ただ、他の四人にはお礼を言っといた方がいい。あくまでもお礼だ。謝ったら同じことを言われることになるからな」
私の言葉に、内田が少しだけ笑う。
「な、何か
「いえ。ただ、同じことを山ノ井さんも
なんとなく、その時の情景が目に浮かぶ。確かに山ノ井であれば言いそうなセリフである。彼には悪いが、私も少し笑ってしまった。
「ただ、笑うことができないこともあります。渡会さんは
「そうだろうな。見たところ、限界を超える色彩法を使っていた。目が正常に働くはずがない。第一、ハバリートの最強の陣形技令を破ったんだ。それも一点で。副作用がなければ、逆に
「ええ、予測された通りです。一目見ただけですが、目から感じられる力が完全に無くなっていました。それに、強力な陣形技令を破るほどです。間違いなく、網膜に過負荷が掛かり、
少しだけ、背筋に寒気が走る。思えば、十二月も半ば。危険と恐怖と
「とりあえず、後はハバリートを倒すだけだな」
「はい。明日はハバリートも回復しているうえに、渡会さんの色彩法がない以上、厳しい戦いになるでしょう」
「でも、内田が雷技令を使えるから大丈夫だろう。それに、四人で戦えば何とかなるだろう。少なくとも、今日と同じぐらいならどうにでもなるさ」
見るからに、内田の表情は
「まあ、博貴のその能天気さは特筆に値します。ですが、その
「とりあえず、司書の塔に戻ろう。渡会の様子も気になるし、明日の戦略も考えないといけない。急いで戻ろう」
私の言葉に、内田は私を抱えて森の中を駆けだした。情けないことにお姫様抱っこの逆という状況であるのだが、私も深手を負っている以上、ただ雲に笑われるのを黙って耐えるしかなかった。
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