第21話 助けを求めて
「うわぁぁぁぁぁぁ!」俺は踵を返して全速力で走り出した…
「次は外さないよ…それっ!」
バリーン…バリーン…
一目散に山肌に沿った道を駆け下りる俺を追い詰める賢者…
平坦な道でもなく、障害物だらけの道を彼女のカミナリは容赦なく追いかけてくる…
五合目…三合目と随分、山を駆け下りたその時だった…
「あっ!」
「フフッ…」
山肌の一本道を…来る前には無かった大木が横たわるように道を塞いでいた…
「あれだ…!」さっき賢者が落としたカミナリで崖を崩れ落ちて行った大木を思い出した。
「いよいよゲームオーバーだね…ウフフ…」
ペロッと舌舐めずりをして賢者は少しずつこちらへ歩み寄ってくる…
「ク、クゥーン…」
…な、何?今、何か聞こえたような…
「ベロ!」
「えっ…?」
「どけよ!この野郎…!!」
賢者は僕を突き飛ばして倒木に駆け寄った…
「あっ!」
よく見ると白い仔犬モンスター(♀)が倒木の下敷きになって苦しそうに
「に、人間…早くベロを助けるんだ…急げ!」
「あ、ああ…」
俺達は二人で倒木を持ち上げようとするが…勿論ビクともしない…
「ダ、ダメだ…動かない…」
「こ、こうなったら…」
杖を振りかざす賢者…
「バッ、バカ!…そんな事したら木は壊せるかも知れないけど…仔犬まで…」
「くっ…じゃあ…どうすれば…」
「仲間を呼ぶんだ…みんなで木を
…俺の言葉に彼女は悲しそうに目を伏せた。
「あたしに…仲間なんて…いないわ…」
「じゃあ…あの仔犬は…助からないぜ…」
「ううっ…」強く拳を握りしめる賢者…
俺は癒しの杖で仔犬を回復し始めた。そして彼女に向き直って叫んだ。
「さあ…早く…誰かに助けを!」
「う、ううっ…分かったわ…でも…ベロに何かあったらタダじゃおかないわよ…」
そう言って彼女は全速力で白嵐城の方へ飛び去った…
「ク、クウーン…」白い仔犬モンスターは苦しそうな声を上げている…
「大丈夫か…?絶対に助けてやるからな…」
俺は辺りを見渡した…何か…何とかしてコイツを助けられるモノは無いのか…?
「キュピッ…」倒木の上から小さな声が聞こえた…
「おっ…?あれは…」
「ひっ…姫様…大変です…」
…武闘大会の会場となる白嵐城の中の闘技場で汗をかいている拳法着を着た美しい女性の元へ門番兵が全力で駆け寄って行く…
「…何事ですか…?」
「実は…」説明しようとする門番兵を押し退け、一人の女性が姫の前に姿を現した。
「…リザ…あなた…」姫はその女性を睨みつけた…
「久しぶりね…モナ…」
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