第20話 白嵐山の賢者

…ザッ…ザッ…


…はぁ…はぁ…



現実世界でも課外授業でしか絶対にしないであろう

山登りを俺は余儀無くされていた。



もう…随分と来たかな…


白嵐城の北側…白嵐山は岩だらけの険しい山だった…


どうして山登りをしているのかは昨日、酒場の話に首を突っ込んだところから始まる…










「じゃあ…エルフの里出身のその賢者が白嵐の姫と大ゲンカを…?」


「ああ…白嵐には魔法学校があってな、その賢者は魔法学校でもトップの成績…ところが姫様は魔法が大の苦手…その代わり子供の頃から拳法を習っていてその素質は誰もが認めるほどなんだよ…


でも…幼い頃は二人とも仲が良かったんだけど、

いつからか反目するようになって…


賢者はモンスターを集めて姫を…姫は武闘に優れた者を集めて御抱おかかえにして賢者を…


それぞれ倒そうって企てているって話なんだよ…」


「その賢者って何処に棲んでいるんですか…?」



「ああ…」酒場の男は窓から見える白嵐山を指差した。


「あそこに棲んでるらしいよ…でも兄ちゃん…まさか賢者に…」


「ええ…会いに行こうと思います…」


「ヒイッ!や、止めといたほうがいいぜ…

エルフは人間でもない、魔族でもない…モンスターに近い存在だからな…


話の通じる相手じゃないぞ…」


「それでも…俺は…力を貸してもらわないと…」



…ザッ…ザッ…


…はぁ…はぁ…



山道を登って道無き道を歩いていると仔犬のモンスター(♂)が現れた…


…コイツらの相手をしている時間はないな…



俺は一生懸命…仔犬達を振り切って白嵐山の頂上の方へ向かって進んだ…




またしばらく進むと道は途切れ、山の内部に続いている洞窟があった…


「この洞窟の中に…」



「洞窟の中に…何だ?人間よ…?」


思わず背後を振り向いたおれを睨んでいる女性…

フワフワと宙に浮いている姿を見ておれはこの女性が噂に聞いた賢者だと直感で分かった…




「お、お願いがあって来ました…」


「お願い?何だ…?今は機嫌が良いから聞いてやるよ…言ってみな…」


「ち、力を貸してください…」


「力…あたしの…?どういう事だい?」


「俺…どうしても…彼女を…」










「…なるほど…お前のパートナーをな…」


「何故いなくなったのかも分からないんです…

彼女が俺が嫌だというのならそれは何故なのか…」




「さて…」腰掛けていた賢者は立ち上がった。


「話は聞いてやったぞ…心おき無く地獄へ行くがいい…」


「えっ?ち、力を貸してくれるんじゃ…?」


「馬鹿者か?お前は…


そんなに甘い事を言っておるからパートナーにも

逃げられるのでは無いのか…?


武闘大会に出るために力を貸せなんて…あのモナの馬鹿の為に私が力を貸すようなもんじゃないか…


お主に手を貸してやるのはもう要らぬ事で悩まなくて良いようにゲームオーバーにしてやる…という事よ…迷わず地獄に落ちろ…」



そういうと彼女は杖を頭上に振り上げた…




…バリバリバリバリーン!




雷が近くの木に落ちた…その木は根元から崩れて崖から下に落ちていく…




「次はお前があの木と同じ運命さ…」

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