第15話 ジレンマ
そして…俺達はいよいよ草緑の街を出て白嵐の城下町へと旅立った…
なんとしても必人の手掛かりを掴まなきゃ…
そう言えば…
「ねぇ…ルーシーちゃん…俺達は海岸沿いの草原からゲームスタートだったでしょ?
みんな同じって訳じゃないの?」
「そうですね…きっと運営サイドが全てのフィールド上に均一に振り分けていると思います…
あ…難易度は同じだとは思いますが…
元々このゲームの目的は絆を深める事…です。
親子…親友…兄弟…同僚や学友…それに恋人…」
…真っ直ぐ俺を見つめるルーシーちゃん。
俺も頷きながら彼女を見つめた…
「様々な絆を深める事が目的なので敢えてクリアには
「じょ、冗談じゃないよ…必人を連れて早く自分の世界に帰らないと俺達は受験生なんだぜ…」
「そう…ですよね…」
「あ…」
俺にはルーシーちゃんが泣きそうに微笑んだように見えた…ゲームをクリアすること…それは俺と彼女の別れを意味しているのかもしれない…
考えてみればゲームのキャラにそんなに思いを馳せた事はなかったかもしれない…プレイをしている時には思い入れのあるキャラクターはもちろんいた…
でもクリアして…別れがやって来て辛いだなんて…
このままずっとこのジレンマに悩まなきゃいけないのだろうか…?
「も…もし、クリアして…再度ゲームを始めるとどうなるの…?また俺達…出会えて…違う旅が出来るのかな?」
…彼女は悲しそうに目を伏せながら口を開く…
「さあ…私もクリア後については分かりません…
…でも…」 「でも?」
「たとえお別れの日が来たとしても私は光輝くんの事を絶対に忘れません…
だってあなたは私のパートナーですから…」
…ズッキュゥゥゥゥン!
こ、これ…もう…俺…彼女から離れられへんやんけ…
ど、どうするんだよ…
座り込んで頭を抱える俺に彼女は優しく手を差し伸べた…
「光輝くん…大丈夫だよ…」
「えっ?」
「だって…光輝くん…昨日私に言ってくれたでしょ…?
『これから素晴らしい思い出を沢山作ろうって…』
だから…そんな別れの日のことばかり考えていたら
素晴らしい思い出なんて作れないよ…」
彼女はいつの間にか俺の大好きな笑顔を取り戻していた。
「さあ…早く…行こうよ…」 「う…うん」
俺の前に立って手を引く彼女の頰に一筋の涙が伝って落ちた…
青空とどこまでも続いていそうな草原の中の一本道を彼女に手を引かれて歩いて行く…
俺達の絆はこの道のようにどこまでも続いていくと良いなぁ…
彼女の気持ちを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます