第14話 素晴らしい思い出

「うわぁぁぁぁ!…ひ、羊さん…助けてよ…」


「メェェ!」


俺達はおっきな羊モンスター(♀)に助けて貰いながら少しずつレベル上げと報奨金稼ぎを始めた…



モンスターを倒すと貰える報奨金で俺は少し高かったが癒しの杖、ルーシーちゃんには魔力の杖を買った…体力の無い分は回復でカバー。我ながらいい作戦だ…



特に凄いのが全員(♀)だった場合…無戦闘で経験値と報奨金が貰える…相手が闘う気を失くしてくれるからだ…



…テッテレ〜!


レベルが上がると当然、俺のステータスも上がっていく…特に全振りのが…


「メェェ〜」


他の羊モンスター(♀)もやって来て俺の顔を舐める…よく見ると目がハートに…ちょ、ちょっと待って…


全速力で逃げる俺に当然ルーシーちゃんは呆れ顔…



「あーあ…


『多少の無理は聞いてあげないと…』


なんて言うんじゃなかったよ…」


とにかく今日の戦闘でお金もレベルも満足できる程度にはなった…いよいよ明日には白嵐の城下町に向かって旅立とうと思う…




「いらっしゃいませ…はぁ〜い!お二人さんねぇ〜どうぞこちらへ…!」


ルーシーちゃんの助言通り、宿屋を屈強な肉体をウリにしている男性店主の店に変えて草緑の街の最後の夜を迎えた…



「じゃあ…私はお風呂に入ってきますね…」


「ああ…俺は食事の前に入ったから…


もう…布団に入って休むよ…」


俺の言葉にルーシーちゃんはニコッと笑って


「この街ともお別れかあ…なんか少し寂しいけど、

私達の冒険の始まりの街だったね…


思い出深い街だね…」と呟いた。



「そうだね…でも明日からまた新しい旅が始まるから…これからもっともっと沢山の思い出を作ろうよ…


この街以上の素晴らしい思い出をさ…」



光輝の笑顔を見たルーシーの心音は高鳴った…


トクン…トクン…トクン…



「わ、私…早くお風呂に行かなきゃ…」…バタン!



…彼女がドアを閉めるのと同時に俺もベッドに潜り込んだ。


…また明日から頑張らないとな…



その時、俺の背中はギュッと抱きしめられた…




ル、ルーシーちゃん? ダ、ダメだよ…明日は早くに発つつもりだから…君も早く休まないと…


それに俺達…まだキスもしてないし…


いつかこの冒険を続けてお互いにもっと分かり合えたら俺は君とたとえ種族の壁を超えても…




俺の頭の中はルーシーちゃんの事で一杯になった…


ああ…でも俺…君が大好きで…もう…我慢できないよ…




理性で自分自身を抑えられなくなった俺は彼女に口づけしようと振り返った…







「あら…意外に積極的なのね…嬉しいわ…」


屈強な男性店主の顔が僕の顔の前に現れた。












「ギィヤァァァァァァ〜!」



廊下の角を曲がろうとしていたルーシーちゃんは

俺の叫び声に驚いて駆け戻った…



「光輝くん!一体どう…し…」



「ウフ〜ン!照れなくて良いじゃない…あなたもその気だったんでしょ?」


「ル、ルーシーちゃん!助けてぇぇぇぇ!」



俺が店主に襲われそうになっているその光景を見た彼女は顔を痙攣ひきつらせながら呟いた…





「本当に…素晴らしい思い出…出来るの…?」

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