第11話 ピンチをチャンスに

…俺は起き抜けでルーシーちゃんが横にいてビックリして取り敢えずシーツを取ろうとしていたと説明した…


「そ、そうだったの…ゴメンなさい…また私、早とちりしてしまって…」


「いや…でも何でルーシーちゃん…横で寝てたの?

そっちに自分のベッドがあるのに…」



昨夜ゆうべ…光輝くんの横に葡萄酒の入ったグラスがあったの…


美味しそうだったから…つい一口…」



…ああ…女将さんも飲むつもりだったのか…


……!女将さん?


そうだ…俺…ワインを勧められて…



「ルーシーちゃん…女将さんは…?」


そう言うと彼女は少し機嫌悪そうに…


「もう…光輝くん…他の人を部屋に入れちゃダメだよ…」


…ああ…彼女が来てくれたんだな…


「ゴメンよ…でも女将さんだから大丈夫かなと思って…」



「まあ…そうだよね…でも気をつけないと…」



「うん。…ワイン…美味しかった?」



「口をつけてから…その後は覚えてないの…」

彼女はショボンとして俯いた…



…クスッ…俺はルーシーちゃんが可愛くて笑ってしまった。



彼女は頰を膨らませた。


「もう…なんで笑うのよ…」


「ゴメンゴメン…俺と同じだから…」



「あ…ウフフ…本当だね!アハハハハ…」


「アハハハハ…」

 


笑いながら俺はふとスマホに目をやった…



「今、何時だろうか…?」



「そ、そうだ…光輝くん…ログインボーナスを貰わなきゃ…」



「あ…じゃあ…お願いします…」



俺は彼女にスマホを渡した…


彼女はスマホを受け取った後、少し考えてから

俺に意外な事を提案してきた…




「ねえ…光輝くん…全振りも良いけど…少しは違う要素に振ったほうが良いんじゃない…?」



「あ…うん…そうだね…そうなんだけど…

昨日の戦闘でも痛感したんだ。体力が無くなって逃げられなくなったらどうしようも無いって…」



「そう!だからもう少しHP寄りに…」



「分かった…じゃあ…また全振りで…!」




「えっ…全振り…?」



「えっ?」



どうも話が噛み合わない…



「ルーシーちゃん…体力に全振りしてくれてたんだよね…?」



「えっ…してませんよ…だって光輝くん…一番上の要素に全振りって…」




…そう言ったね!確かに言った…でも一番上の要素ってHPじゃないのか…?

「ル、ルーシーちゃん…じゃあ…今までどんな要素に全振りしてたの?」




「それは…『CHARM』…魅力です…」



…み、魅力…何で…魅力が一番上に配置されるRPGって一体…



…もっとちゃんと確認しておけば良かった…

初期値からボーナスポイントから全部を無駄にしてしまったのは俺の責任だ…



なのにルーシーちゃんは…俯いて俺の意図を読み取れなかった事をすごく気にしているようだ…




彼女とは昨日、異世界に飛ばされてから出会った女の子だ。


そりゃあ彼女は魔族で…出会いのキッカケは俺がガチャで当てたSSRキャラ…


でも一日…実際は半日くらいだけど一緒に過ごして

戦闘ピンチも切り抜けて…彼女がどんなに頼りになるパートナーか分かった…

いや、逆に彼女と一緒にじゃないとこのゲームをクリアする意味も無いくらいに彼女を信頼している…



俺は彼女に歩み寄る…


「…ルーシーちゃん…俺、思うんだけど…

このピンチをさ、チャンスに変えない…?」




「ピンチをチャンス?どういう事…?」











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