第8話 初…気まずい空気…

「ゴメンよ…羊さん…俺達もう街に行かなきゃ…」


「メェェ…」羊さんから寂しそうな声が聞こえてきた。 俺は羊さんの頭を撫でてあげた。


「そんな悲しまないで…またどこかで会えるよ…ね!」  「メェッ!」





…こうして俺達はまた街に向かう事になった…


…ピピピッ…


「あっ!光輝くん…スマホ…貸して…」


「えっ…あっ…はい!」



…スマホを受け取ったルーシーちゃんは画面を見て驚いた様子を見せた。そして僕に向き直って


「レベル…上がりましたよ…」


「ええっ!」


「たぶん…あの羊モンスターを倒したから…」


「レベルはどれくらい?」


「今…18ですね…ポイントはまた全振りですか?」


「ああ…頼むよ…」




…初めての戦闘で僕は体力の無さをマジマジと痛感した。とにかく僕は生き残る事を最優先したい…


ルーシーちゃんもいるし、武器や装備を手に入れるまでは…絶対に体力重視だよ…




下り坂の草原を駆け下りて俺達はやっと草緑グラス・グリーンの街に辿り着いた。






街に着くなり、魔族と人間…両方の水商売風の女性

が俺を取り囲んだ…


「お兄さ〜ん!ちょっとお店に寄ってかない…安くしとくわよ…」


「ねえねぇ…何処から来たの…飲みながらお話しましょうよ…」


中にはボディタッチをする女の子まで出てくる始末…



「ちょっと…ちょっと…ちょっと!」


ルーシーちゃんが女の子達を掻き分けて俺の元まで辿り着いた…



「こ、こ、この人はね…わ、わ、私の大事の人だから…誘ったりしないでよ…」



…水商売のお姉さん達はしらけた目でルーシーちゃんを眺める…


「何よ…アンタ…タダの旅のパートナーでしょ…

プレイヤーのお楽しみの部分に口を出さない方が良いんじゃないの…?」


一人の綺麗なお姉さんがルーシーちゃんにそう言い放つと他のお姉様方もそうだそうだとニヤニヤ笑いながらルーシーちゃんに詰め寄った…


ルーシーちゃんは涙を浮かべながら…


「違うもん…私達は…」



「じゃあ…キスぐらいしてみなさいよ…」



「えっ…?」驚くルーシーちゃん…


少し考える素振りを見せた彼女は二度頷いて…

俺の前に立った…


「ちょ…ちょっと待ってよ…ルーシーちゃん…

そんな事しなくても…僕はお店になんか…」





「光輝くん…」





ルーシーちゃんは背伸びをして僕に口づけた…




俺自身もそして彼女にも人生で初めての経験だったのかもしれない…


柔らかい物が口に触れた感覚よりも先に彼女が傷ついてないかどうかが一番心配で予想していた嬉しさやレモンの香りなんかは到底感じられなかった…


いや…味わえる余裕が無かったというのが正しいのかもしれない…



「あーあ!つまんないねえ…河岸を変えなきゃね…

あ、お兄さん…久しぶり…たまには来ておくれよ…」





客引きのお姉様方は去り…残された俺とルーシーちゃんの間にはいつもと違う空気が漂っていた…

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