第3話 いいなぁ…
「ここ…何処だ…うわっ!」
ハンバーガーセットとスマホの乗ったトレイを持ちながら俺はすぐ側に海を臨める崖の上の夕焼けの草原に佇んでいた…
水平線と周りをオレンジ色に染めている太陽に向かって立つ僕の頬を潮の香りの海風がまるで
…本当に綺麗な茜色の景色だった。
ただ…その綺麗な太陽が二つある事が今いるこの世界が俺が棲む世界と違う事を示していた…
「蜃気楼でも錯覚でもVRでも無い…よな…」
学校の帰りに寄ったショッピングモールのフードコートでこのハンバーガーセットを食べながらゲームをするつもりだったのに…何で…
よくあるパターンだと…まあよくあっちゃ困るんだけど…これは異世界に飛ばされたパターンかな?
その…よくあるパターンだと、スマホは勿論圏外…
やっぱり通話は圏外だな…ん?…ワ、WiFiが繋がってる…?何故…?
この際何でも良い…僕はSNSから通話が出来ないか
試してみようとスマホのタッチパネルを押した…
しかしいつも使っている全てのアプリは起動しなかった…
「これも…これも…起動しない!くそっ!」
このまま夜を迎えるのか…広い草原に一人…心細いし、少し肌寒い…夜になればもっと一気に気温が下がるだろう…スマホで何か良い知恵は無いか探そうか…?いや、ここはバッテリーの持ちを気にしたほうが…
そうだ…俺はスマホの画面を見てある事に気付いた…
まだ試してないアプリがあったぞ…
最後にさっき入れたゲームのパネルを指で押した…
…すると不思議な事にさっきダウンロードしたゲームが起動した…「こ、このゲームだけ使えるのか…?でもゲームが出来たって…ヒマつぶしにしか…」
「ログインボーナス!」
スマホから聞こえてきたその声に目をやると、さっき当たった女の子…ルーシーちゃんが画面に映っていた…
どうやら一日一回ログインボーナスでポイントとアイテムが貰えるらしい…
でも…この時の俺は異世界に飛ばされて、これからの身の振り方ばかりを考えていたので正直ログインボーナスなんか…と思っていた…
「グウ…キュルルルル…」
…俺のお腹が凄い音をあげた…
異世界でも腹が減る事が分かった…
「と、取り敢えず腹ごしらえだ…」
俺は冷えきったハンバーガーを食べようと包み紙を半分開いた…
「いっただっきま…」
「…いいなぁ…」
俺の耳元で背後から誰かが囁いた…
「うひゃあ!」驚いて尻もちをついてしまった…
「だ…誰、誰、誰…!」
倒れたまま振り返るとそこには…可愛い女の子が…
あれ…
「あっ、あの…君…どこかで会ったっけ…?」
彼女は俺の言葉に一瞬驚いた表情をした後…
目を伏せて涙を浮かべた…
「あなた…あんなに喜んでくださったのに…」
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