第23話 誰にも邪魔されたくない

 コン、コンコン


 重い鉄扉を開けると、アイボリーのTシャツに黄緑色のショートパンツを着た玲が部屋に滑り込んできた。


「へえ~こんな部屋になってたんだ」


「そう、俺も試しに入ってみたんだけどさ。意外とちゃんとしていてびっくりしたよ」


「で、もう、お布団敷いて一人でいいことしてたとか?」


「ああ、もう、やりまくりだ」


 手提げ袋を下に置いた玲を俺は抱きしめて、まだ、半渇きの髪に顔をうずめた。


「玲、逢いたかった」


 顔を離さずにそう言いながら玲の薄い唇に近付いていって、そして、奪った。


 すぐに玲の舌が俺の中に入ってきてひとしきり俺を弄ぶ。


「玲は?」


 顔を離して俺がそう尋ねると「ん?なに?」と上目遣いに玲が聞き返した。


「玲は、俺に逢いたかったか?」


「逢いたかったよ」と言いながら俺の背中に左腕を回し、右腕を俺の首に巻き付けた。右手の人差し指はまた、自分の口元に持っていっただろう。


 俺は、両腕で玲を抱きかかえて敷布団の上に静かに寝かせ、玲の首元に顔をうずめた。

 首元から右耳に舌を這わせて、耳の穴に舌を差し入れると「う~ん、くすぐったい」と言いながら躰を反転させて俺の躰の上に乗ってきた。


♪ピロロロ ピロロロ


 玲の携帯がかばんの中で鳴った。


「ちょっと、ごめんね」と玲は俺の身体から離れた。


「どした?うん…うん… それでいいの。うん… わかった。まだ、お風呂入るから帰ったらね。うん… じゃあね」


「どした?家からか?」


「うん、マナツから」


「マナツって…」


「長女よ。夏に生まれたからまことの夏で真夏」


「で、真夏ちゃん、なんだって?」


「ううん、なんでもないの。宿題のことよ」


 そう言いながら玲は携帯の電源をオフにした。


「ほんと、いいのか?」


「いいの。誰にも邪魔されたくないもの」


 そう言いながら玲は再び俺の上に乗ってきてタオル地の上着をたくし上げて脱がせた。


「お返し」


 玲の舌が俺の左耳の中に入り込んできてまさぐってきた。そして、耳の上の方にある三角形の小さな穴には舌先を尖らせて隙間を埋めた。


「あ…」と俺が声を漏らすと、玲は俺の頬、額、鼻すじと舌先を這わせてきたので、唇を俺が欲しがって向かうと玲は顔を離して、今度は俺の胸に顔をうずめ、乳首を舌で舐めまわした。

 さらに、俺が上体を浮かして玲を求めに行くと、俺の両腕を万歳させて俺の動きを制し、俺の脇の下から腕の裏に掛けて舌を上下にゆっくり這わせた。

 もうすっかり俺が抵抗できなくなったのを見定めると、玲は俺の脇腹に唇を下ろしていきながら、右手をタオル地のハーフパンツの下から滑りこませてきた。


「もう、こんなになって」


「もう、じゃないだろ、じゅうぶんに、されてる」


 俺の言葉なんてちっとも聞いていない風に、玲は両手でハーフパンツを脱がせてから口に含んだ。


 この前の時もそうだったし、それ以前の、若い頃だってそうだったが、玲のオーラルセックスは半端なく気持ち良かった。今まで一度も尋ねたことはないけど、いったいどうやっているのか説明してほしいくらいだ。玲はきっと何も言わないだろうし、仮に説明をしてくれたところで、俺は感嘆するしかないのだろうが。

 玲はAV女優がよくやるような激しいピストン運動はせず、ゆっくりと顔を上下に動かす。舌は、そう、舌はきっと俺の、否、「男の」かもしれないが、快感のポイントをよく知っていて、そこを丹念に刺激しているに違いない。そして、地味ながら効き目があると思っているのが顔の角度だ。玲の額が俺のお腹に付くか付かないかくらいの角度で動かす。


(そう…そう… きっと、そうだ。あ、だめ、だめだよ…)


 俺は、腰を浮かせながら玲の口の中に放出させた。

 放出させている間、玲は、固く口を閉じて締め上げる。


「玲、ごめん。我慢できなかったよ」


 顔を俺からゆっくり離した玲は、笑顔だった。


「どくんどくんがすごかったわ」


「って、玲、お前、俺の…」


「うん、飲んじゃった」


「え?だいじょうぶ?」


「きっと、あなたのがあたしのお腹の中をきれいにしてくれるわ」


 若い頃だって、こんなことは一度もなかった。AVでは無い話じゃないけれど、実際にされると嬉しく思うものなんだな、と俺は思った。


「それより… まだ、こんななんだけど。入るかな」


 そう言いながら、玲は、俺に覆いかぶさって、自分の中に招き入れた。


「だいじょうぶみたい」


 再び、AVなら無い話じゃないけれど、中年真っ盛りの俺がすっかり出しきった後にこんなだなんてちょっと信じられなかった。


 玲は、そんな俺の驚きなんて意にも介さずに、俺の躰に密着させながら前後にゆっくり動かしながら、俺の首に腕を回してきた。

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