第07話 あの年上の男の顛末と始まり
カレンダーが8月に変わってすぐのことだ。
「奥さん連れて、子どもまで一緒にって酷いと思わない?」
Withのカウンターに座っていた玲が半ば嗚咽しながら、バイトの
本城市の夏祭りの初日の大民謡流しに、玲は銀行員の一人として参加したのだが、あの年上の彼氏が奥さんと、そして、子どもまで抱っこして見物に来たのだそうだ。
(なんと、あの男と不倫だったのか…)
俺は、カウンターの端の方で、素知らぬ顔して聞き流していたが、まだ二十歳だというのに、妻子の存在をわかっていながらの不倫をして、しかも、そんな男の対応だけを責め、馴染みになったばかりのお店のバイトの子を相手にくどいている玲の性格の方も酷いと当時は思った。
しかし、結局、それ以上に深く気に留めることが無かったせいで、次のステップが俺と玲の仲を決定づけた。
玲とその男の不倫はそれで終わり(きっと、男が自力で不倫を止めたんだろう)、それ以後、間もなくして、Withのバイトの唯ちゃんとWithの常連客で保険会社に勤める男、そして玲と俺の4人で店で玉を撞いたり、俺のアパートで宅飲みしたりする仲になった。
そして、さらに間もなく、俺のアパートから歩いて3分くらいに実家がある玲が一人で俺のアパートに遊びに来るようになった。
「玲ちゃんは、好きな人いるの?」
8月ももうすぐ終わりというある日、俺は何の気なしに聞いたのだが、玲は俺の顔をじっと見つめたまま何も言わなかった。
「もしかして、俺、とか?」
と尋ねたら、玲はコクンと頷いた。
相変わらず、モンチッチみたいな玲だったが、妙に愛おしく思った俺は黙って唇を奪いにいった。
「ね。どう?ハーモニカ」
俺の性器を横に咥えながら左右に動かして俺の反応を確かめる玲の顔があった。
「ちょ、ちょっと、それは…」
「ん?だめ?じゃこれは?」
「だめじゃないってば、それも、さっきのも、みんないい」
いつだったか、Withで、さくらんぼの柄をいとも簡単に舌で結んだ玲が俺の性器を縦横無尽に口で愛撫するテクニックは天才的と言ってよかった。
「上のお口だけでいいの?」
こんなときに上目遣いに玲が発する言葉もいやらしさしかなかった。
あのふいに訪れたコクンと頷くだけの告白とキスから、俺が玲にハマってしまうまで、ほんのわずかな期間だった、と、玲の発するいやらしい言葉と共に記憶している。
【今日は、対戦してくれてありがとう。今度、飲みにいかない?】
ネカフェからマンションに戻った俺の携帯に玲からショートメールが届いた。
【ああ、いいよ】
俺は、すでに、玲の口と舌の感触を思い出していた。
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