第12話 リースノット王国って詰んでるよ!

 リースノット王国の王城に行ってから、よくお父様が私の部屋に顔を出すようになった。

 お父様はいつも顔の眉間に皺を寄せているから、あまり近づきたくない。

 何かあったらすぐに文句を言ってきそう。


 そして、今日は隣国の言語の勉強の時間。

 前世では自慢ではないけど、日本語オンリーな生活をしていたから英語とかドイツ語とか苦手だった。

 まぁ基本、私はあまり頭よくなかったし……。

 

 それでも仕事で使っていたコンピュータ言語とかは、必要に迫られていたから社会人として学校に通わなくてもある程度、出来るくらい覚えた。

 そして、ゲームの改造については趣味だったのでインターネットで解説のブログを作っちゃうくらい頑張ってしまった。


 おっと……話がそれてしまいました。


 そんなおバカな私の脳みそでも、今のこの体はすんなりと言語を吸収して覚えてしまう。

 5歳の体ってすごい。

 せっせと文字の書き方に話し方、気候、風土を勉強していく。

 政治形態も学んでいくけど、リースノット王国と隣国の軍事国家ヴァルキリアス以外の国々は奴隷制を推奨している。


 私は、奴隷制度を見てため息をついた。

 この世界は、どこまで言っても残酷だと思う。

 たしかに魔法要素だってあるし、ステータスだってあるらしい。

 だけど、身分階級差が酷い。


 平民に生まれた人はずっと平民のままだし、貴族に生まれた人はずっと貴人のまま。

 そして地球では存在していたノブレス・オブリージュは、この世界には存在していない。


 ただ、搾取するだけ。 

 戦争になれば徴兵だけして隠れて指示を出すだけの貴族が多いらしい。

 そのおかげで国同士の戦争は少ないけど、貴族同士の戦争はとても多い。

 魔法帝国ジールとセイレーン連邦、アルドーラ公国は毎月のように戦争をしているとアプリコット先生より先日教えてもらった。

 月刊戦争? と一瞬思ってしまったけど、口には出さずにいた。


 この世界は本当に厳しい世界。

 私は世界地図を広げながら各国の情勢を見ていく。


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 ちなみに私が生まれたリースノット王国は、周囲を天然の山に囲まれている。

 しかも、どこの国にも存在するダンジョンという資源を排出するポイントが無い事もあって侵略する価値がまったくない国と言われていて、3000年近く平和を保っている。

 

 私は、アプリコット先生が帰った後に、リースノット王家歴史本を読んで資源もない、食料も大してとれない、ダンジョンもない。あるのは海から取れる塩と海産物だけという末期的な経済状況にため息をついた。


 たしかに、塩は強い武器かもしれないけど、取り引き先がアルドーラ公国だけと言うのがまずいと思う。

 先々代の王女が、アルドーラ公国に嫁いだらしいけどもう100年以上経過しているのだから、そろそろ一国だけの取引をやめて、他の国々と国交があるのだから他国とも取引を持つべきだと思う。

だって、いつ時代が動くか分からないんだし。


 もしアルドーラ公国が、塩いらないと言ってきたらリースノット王国は、外貨を稼ぐ術を無くしてすぐに食料不足に陥るから。

 そのへんを国王陛下は、分かっていらっしゃると思うけど有効な打開策が思いつかないと思う。

 そもそも、リースノット王国は天然の山に囲まれていると言う事は土壌は火山灰が多く降り積もっている状態だと思う。

 そうすると、普通の農作物は育ちにくい。

 

 年表を見る限りでは、リースノット王国で抱えられる人口の数は、10万人まで。

 それを、アルドーラ公国との塩取引を始めた事で外貨を獲得し、その外貨で食料を購入した事で100年前から人口が爆発的に増えている。

 だから、アルドーラ公国との塩取引は、リースノット王国にとって生命線だと思う。


 私は、ベッドの上で広げていたリースノット王国の年表を閉じるとため息をつく。

 はっきり言って、リースノット王国には発展の余地がない。


 発展させる為には大規模な土壌改革に水害対策、工業促進化などやらないといけない事がいっぱいある。

 これが、私が王子だったら事業改革をするんだけど女だから、それもできない。

 あまり無闇に口を出すと、シュトロハイム家の家名に泥を塗りかねないし……。

 

 私は、自室のテーブルの上に置かれている黒い石を手に取る。

 この石は、魔力石と言ってダンジョンのモンスターから出るアイテムらしい。

 マジックアイテムを動かすアイテムだとお父様は言っていた。


 私は黒い石を、白色魔宝石に変化させる。

 もう、これも慣れたもので1日1個と言われていたけど、面倒だからあるだけ白色魔宝石に変えている。


 今日も1日、代わり映えしない毎日が続くのかなと黒い髪のけをくるくると指先で弄っていると、部屋のドアがノックされた。


「お嬢様、エルド・フォン・ウラヌス様が、ユウティーシア様とお会いしたいと来ております」

 ようやく来てくれた。

 思っていたより遅いくらいかな?



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