第11話 婚約者との初めての出会い
「二人とも、あまり将来の事を考えても仕方あるまい。ユウティーシア嬢には魔力があった。今回はそれだけでいいではないか? それに軍備に関しての問題も先行きは明るい」
陛下は、笑いながら語る。
「それに、王家の血筋に魔力量も大陸随一、私の息子クラウスの許嫁にこれほどの良縁はないだろう?」
陛下の言葉にお父様は頷いている。
――だけど、私としては男と結婚するのは……嫌です……。
こういう時に、真のヒロインとか出てきたりしないですかね?
私を悪役令嬢として断罪して、国から追放とかしてくれる私にとってのヒロインとかいないんですか?
そんな私の思いを無視して大人達の会話は続く。
「娘には、白色魔宝石のみ作らせる方向にして魔法関連の書物に関しては一切触れさせない方向でいきます。これだけの魔力量を保持している状態で魔法を使えればどれだけの大惨事が起きるか想像も出来ませんから」
お父様の言葉に、ウラヌス卿も頷きながら口を開く。
「たしかに……飲み水を確保する魔法で研究所設備の9割を水浸しにしましたから」
ウラヌス卿の言葉に全員の視線が私に向けられてくる
「それに、魔法が使えたとしたら夫婦喧嘩になった際に、クラウス様も困るでしょう?」
お父様の説明に3人とも頷いている。
それって私には魔術を教えない方向で話は纏まったみたい。
教えてくれないなら生活魔法で最強目指すから別にいいですけどね。
「次に、白色魔宝石ですが石を保持している所有者が魔法を使う事で魔力の器が拡張され絶対魔力量が上がるようです」
ウラヌス卿の言葉に私を除く全員が顔を見合わせている。
「つまり、底辺の魔法師であっても……」
ハデス卿の言葉に。
「はい、中級魔法師クラスの魔力量まで上げる事が可能です。もしかしたら上級、いいえ特級魔法師すら作り出す事が可能になるかもしれません」
ウラヌス卿が答えた。
それと……。
「ここにユウティーシア嬢がいますが、大事な国家機密を聞かれても大丈夫なのでしょうか?」
ウラヌス卿が、いまさらな事を呟いた。
「いくら賢いと言っても5歳の子供に分かる訳があるまい」
陛下がウラヌス卿に話しかけた。
私はそれを見ながら頭を傾げる。
分かりませんアピールすると……。
「シュトロハイム卿、これからの軍議には幼子には退屈だろう。近衛兵と女官に城内の庭園でも案内させよう」
ハデス卿は、すぐに女官2名と近衛兵2名を呼び出し、私を執務室から追い出した。
「ユウティーシア様、今日の庭園はすごく綺麗なのですよ?」
「ユウティーシア様は殿下とご婚約していらっしゃるのですよね?」
などと二人の女官が案内された庭園で、何度も話しかけてくる。
最初は作り笑いをして大人の対応をしていたけど、段々、面倒くさくなってきた。
私は中庭を歩きながら周囲を見渡していると、金髪の少年が一人、庭園内に設置されたベンチに座っていた。
何をしているいのか気になって近づいていくと、少年は血まみれの子犬を抱いていて「僕にもっと魔力があれば助けられるのに」と呟いていた。
先ほど、執務室で私の白色魔宝石は魔力の上限を上げられるような話しをしていた。
もしかしたら……。
「クラウス様、お体が汚れております」
私についてきた女官がクラウスに近づき子犬を見て顔を真っ青にしていた。
私は、近くに落ちていた小石を拾いストールで隠しながら白色魔宝石を生成する。
「クラウス様」
俺はクラウス様へ声をかける。
泣いていたせいだろうか? 目が真っ赤だ。
私は生成した白色魔宝石をクラウス様へ差し出すとクラウス様は受け取ってくれた。
「これは?」
クラウス様が気になって聞いてくる。
「おまじないです。その石を持ったまま魔術を使ってみてください。きっと上手くいくはずです」
私の言葉を聞いて、しばらく考えているとクラウス様の体が白く光りはじめた。
それと同時に子犬の傷が一瞬で治る。
クラウス様は驚いて私を見てきた。
ただ、その場で力尽きたように倒れてしまった。
それから庭園どころか城内はすごい騒ぎになって、私はお父様に怒られた。
そして、私はすぐにシュトロハイム家に馬車で戻される事になった。
私は、シュトロハイム公爵家で湯浴みを済ませベッドに入り寝ようとしたところで……。
「そういえばクラウス様って私、呼んでたけどあの人が私の婚約者なのね……」
寝る間際になってようやく自分の婚約者だと言う事を私は理解した。
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