第10話 世界最強の魔法師?

「さて、ユウティーシア嬢をここに招いたのは訳がある。ウラヌス卿よいか?」


「はい。古文書を調べていたところ魔宝石には及びませんが魔石を作成する事が出来る一族が居た事が分かりました。これはシュトロハイム家ですが、シュトロハイム家では2000年前に特級魔法師がおり低品質の魔石を作る事が出来たそうです。そして驚くべき事は、普段は魔力がまったく確認出来ないのに魔石を作る時だけ魔力が確認出来たと言う点です。かなり昔の記録になる為、確証はありませんがユウティーシア嬢と同じと推測できます」


「という事だ。分かったな?」

 陛下が、お父様へ話が理解出来たか確認を取っている。

私も聞いていて大体理解した。つまり私の魔力は無いんじゃなくて測れない?


「分かりました、という事はユウティーシアの魔力量測定を再度行うという事ですね?」

 お父様は、陛下の話を聞いて私の魔力量測定について頷いている。

 そんな様子を見ていたら


「ユウティーシア嬢、この石版を持って白色魔宝石を作った時のように魔力を流してもらえるかな?」

 ウラヌス卿が石版を差し出してきたので受け取る。

お父様の方へ視線を向けると頷いている。

私は、白色魔宝石を作った時のように魔力を大気中から収束するイメージをして石板に魔力を集めていく。

すると気がつけば石版は手から消えていた。


「――これは……予想外だ」

 誰かが唾を飲み込んだ音が聞こえてきた。

私の足元には砂となった石版の成れの果てがある。

どうしようと思っているとウラヌス卿が急に部屋から出ていくと、数分で騎士達を連れて部屋に入ってきた。


「ウラヌス卿、それは教会に設置してある魔力量だけを調べる魔道具では?」

 ハデス卿の言葉にウラヌス卿は頷くと


「これは理論上、1000万までの魔力量を測る事が出来るオーブです。教会の予備ですがユウティーシア嬢の魔力が測れないと困ってしまうので念のため隣の部屋に用意しておきました」


「なるほどな」

 陛下が頷く。

 それだけで、再度魔力測定の許可が下りたようなもの。

 すぐに直径1メートル程の黒い玉は執務室の中央に置かれる。


「さあ! ユウティーシア嬢、もう一度やってみてください!」

 私は先ほどと同じように、大気中から魔力を集めて、1メートルの玉に魔力を込めていく。


「魔力量が上がっていく!? ユウティーシア嬢、魔力を流すのをやめてください」

 やめてくださいと言われても止め方が分からない。

 そして止め方が分からないから玉が粉々に砕けるのも仕方ない。

 

「――どういうことだ?」

 陛下の声は、震えていた。

ウラヌス卿が冷や汗を流しながら言葉を紡ぐ。


「ユウティーシア嬢の魔力量は、恐らくですが常人のそれを遥かに超えているものと思われます。神級魔法師の位かと思われます」

 ウラヌス卿の言葉に、私以外の大人達は固まっていたけど、すぐに陛下が――


「いまは神級魔法師は世界にはいなかったな?」

 ――言葉を発していた。

 それにウラヌス卿が頷いている。

 ウラヌス卿の態度に陛下は満足そうに頷くと……。


「世界で唯一の神級魔法師か、どうするべきか?」

 国王陛下の言葉を聞いてすぐに動いたのはウラヌス卿だった。


「我が魔法騎士団で鍛えればすぐにでも世界最強の魔法師になるでしょう。そうすれば他国との交渉が有利になりますし知力を見ても魔道具作成が可能になるかも知れません」

 ウラヌス卿は興奮気味に語っているが私としてはあまり賛成できないかな? 一人だけ強くても物量で押しつぶされたどうにもならないと思うし……それに私はこの国に居座るつもりも住むつもりもないし。


「私としては反対だな。個人が武力として突出してればそれだけ他国に危機感を抱かせ悪戯にユウティーシア嬢の身が危険に晒される事になるだろう?」

 と次にハデス卿が異論を唱えている。

 私をそっちのけにした会話はまだまだ続くみたい。


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