第13話 現代チートから始める自国経済の立て直し

「わかりました。すぐに通してください」

 私は、ベッドの上で横になりながら読んでいたリースノット王国の年表を閉じる。

 そしてベッドから降りてからドレスを正す。

 するとドアが数度ノックされた。


「お嬢様、エルド・フォン・ウラヌス公爵様をお連れ致しました」


「ありがとう」

 私はそれだけ言うと、ウラヌス卿が部屋のドアを開けてきた。

 ウラヌス卿と私は視線をかわす。


「ようこそ、そろそろ来られるかと思ってお待ちしていました」

 私の言葉にウラヌス卿が眉を顰めた。


「王城での話しあいの時に説明は受けてはいたけど、ここまで頭が回るのは……」

 ウラヌス卿が不審がっているが、もういまさらだ。


「ステータスが高いからでは?」

 私の言葉にウラヌス卿が「これで5歳なのか?」と呟いているが、時間は有限だし私とウラヌス卿は、パートナーとして対等に契約をかわしているのだ。

 だから遠慮はしない。


「ウラヌス卿、それではお約束の品なのですが、テーブルの上を見てください」

 私の言葉にウラヌス卿の視線が、先ほど私が作った大量の白色魔宝石に向けられる。


「数日間、お渡しできなかったのでその分も含めてあります。1日1個とお父様から言われていますからなるべく多めに持って帰ってくださいね?」

 私は微笑みながらウラヌス卿に告げる。


「それと例の物は調べて頂けましたか?」

 続けて発した言葉に、ウラヌス卿は頷くと懐から数枚の羊皮紙を取り出して私に差し出してくる。

 私はそれを受け取り、目を通していく。

 視界の端で、ウラヌス卿が皮袋に白色魔宝石を入れているのを見ながら……。


 そして羊皮紙に書かれている内容は、私の予想通りのものであった。

 大雨が降るとすぐに泥と化すため、地面の上に出来る作物には適していないと言う事が書かれている。

 そしてここ10年の食料品の価格を見る限り、食料品の価格が少しずつ上がってきている。


 次に価格が上がっている商品の種類に目を通す。

 それのどれもが、アルドーラ公国から買い入れている小麦や大豆、食料品関係に偏っている。つまり、アルドーラ公国は、こちらの脆弱な国体基盤である食料自給率を逆手に取って経済侵略をしてきている可能性がある。


「ウラヌス卿、アルドーラ公国は近年では不作の年はありましたか?」

 私の言葉に


「アルドーラ公国は例年になく豊作と聞いている」

 ウラヌス卿は即答してくれた。

つまり、豊作なのに輸入取引の食料品関係の価格が上がっていると言う事は、これはかなり危険な状態だ。


「ウラヌス卿、リースノット王国はアルドーラ公国から経済侵略を受けている可能性があると思います」

 俺の言葉にウラヌス卿は頷いてきた、


「本当に5歳とは思えないほど、聡明ですね。たしかに100年前に王女様が嫁いだ効力はもうほぼ無いと言って間違いないでしょう。陛下を始めとした文官やあなたの父親に3大公爵家はその事にすでに気がついています」

 ふむふむ。気がついていて、この物価指数の緩やかな上昇ということは……まさか?


「まさか、国庫からお金を出して食料品関係の価格上昇を抑え込んでいますか?」

 私の言葉に、ウラヌス卿の動きが止まる。


「その報告書を見るだけで、そこまで行き着きますか。一体どういう頭をしているんでしょうね?」

 つまり国が、資金を投入する事で物価の上昇を無理やり抑えている状態が現在続いている。

 でもそれは、国庫が尽きるまで……尽きたらどうにもならない。

 しかもリースノット王国には、主産業が塩だけという状況。

 

「ウラヌス卿、リースノット王国は戦争を考えていますか?」

 主産業が無く、魔力量が上がる白色魔宝石が無尽蔵に手に入る状態で他国からの経済侵略が続いている状態なら戦争に活路を導きだす可能性もゼロではない。

 何故なら戦争も外交手段の一つに過ぎないのだから。


「本当に、どこまで……」

 ウラヌス卿ははっきりとは答えない。

 でも、その言葉が戦争の可能性もありえると示唆しているのではないか?


「……ウラヌス卿、私に案があります。このリースノット王国を救うための案です、ですのでお力添えを頂けますか?」

 ウラヌス卿の名前で、事業をしてもらうしかない。

 このまま戦争になれば、まず間違いなく私の重要度は引き上がってしまう。

 そうすると、婚約解消の話どころではない。

 まずは、自国を富ませて私の重要度を引き下げないといけない。



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