第345話
二人の剣幕につい軽く頷いてしまったが――。
周囲を見渡すと女性エルフ達11人が全員、拳を握りしめて「よし!」と叫んでいる。
あれ? おれ殴られたりするのか?
いあいあ、とりあえず一度こうして宴をした仲で戦うのはな……。
もしかして――。
初対面で仲間を半殺しにしたのを根に持っていたり?
「――ハッ!」
な、なるほど……そ、そういうこと……なの……か?
「ユウマさん、どうかしましたか?」
サマラが、俺のことを心配そうな顔で見てくるが、今はそれは横に置いておくとしよう。
そう、よく考えれば分かる事ではないか……。
客人を持て成す宴で、これだけ不味い料理を出すのはオカシイと思っていたのだ。
そして極め付けは、青汁のような味にアルコールを足して累乗したような味がする飲み物。
アルコールについては毒素ということで、俺の体が自然と中和してしまい問題のだが、そうすると青汁のエグミだけが残るわけで。
それに良く考えればエルフガーデンに来ておかしな事だらけだ。
フィンデイカ、カレイドスコープ共に俺が女にモテた実感がない!
生まれ育った村では、殆ど女性は寄ってこなかったし、しかもリリナに至っては俺のことを問答無用で殴ってきたりしたからな。
唯一、懐いてきたと言えば妹のアリアくらいだが――。
やっぱり妹は最高だな!
おっと――話は逸れてしまった。
つまり何が言いたいのかと言うと、エルフは、エロフであったが俺が好意的に受け止められるのはおかしいという点だ。
「ユウマさん? ユウマさん?」
サマラが何度も語りかけてくるが、少し黙っていてくれないな。
今、重要なシュミレートを頭の中で行っているのだ。
俺が反応しない事に業を煮やしたのか、サマラが「ユウマさん、大丈夫ですか?」と抱き着いてきた。
「ま、まさか!? ハニートラップか?」
俺は、ささっとサマラから距離を取る。
すると、一瞬サマラが驚いた顔を見せたあとに、アオイ瞳に涙を溜めていくと「私…・…何か嫌われるような事してしまいましたか?」と涙声で尋ねてきた。
俺は思わず「いや、そんなことない。俺の暮らしていた村では異性に抱き着かれる事がなかったからな!」とフォローする。するとサマラが「そうですか……よかったです」と、ニコリと微笑んで話してきたが、なに? これ反応が可愛いすぎだろ。最初に会った頃の勇ましい姿のサマラはどこに行ったのかと思わず心の中で突っ込みを入れたくなってしまう。
「ユウマさんに機嫌を損ねられてエルフガーデンから出ていくと言われたらどうしようかと――」
「そんな訳ないだろ? みんな可愛いし美人なんだからな!」
とりあえず、褒めておくか。
実際、可愛いし美人なのだから褒める分には問題ないからな。
それに、きっとエルフ達に関してリネラスやセイレスの事もあったし、少し偏見な目で見ていたかもしれないからな。
ほら、エルフ達は顔を真っ赤にして瞳を潤ませて俺を見てきているじゃないか。
どう考えても俺を害そうという雰囲気には見えない。
俺のために宴を用意してくれる事といい、思ったより悪い奴らではないのかも知れないな。
「それでは、ユウマさん! 今日は、どの子を所望されますか?」
「……」
やっぱり、このエロフ村は早く何とかしないとダメだな。
「いや、そういうのは間に合ってるから!」
まぁ別に間に合ってはないが、彼女もいないし――。
とりあえず俺は目頭を押さえる。
「ユウマさん、大丈夫ですか?」
サマラが俺の様子を見て何かあったのかと聞いてくるが、特に何もない。
ちょっと俺の周りには暴力に訴える幼馴染とか、ちょっと問題を起こす仲間が多いなと思ったくらいだ。
「だ、大丈夫だ――」
「そうですか……心配ごとがあったら遠慮なく言ってくださいね」
「わ、分かった」
俺はサマラの言葉に頷きながらも、エルフの発情するような病気を根絶したら、きっとアライ村みたく女性には相手されなくなるんだろうなと、少しだけ哀愁を感じる。
「ユウマ様! すでに間に合っているということは、やはりリネラスとそういう仲になっているということですか?」
エイフィルが、どこで習ってきたのか勢いよく右手を挙げると質問してくる。
「…………想像に任せる」
さすがに、リネラスの同意も得ていないのに、そういう仲という嘘をつく訳にもいかないからな。
ただ、俺の言葉を邪推したのか宴に集まったエルフ達は「キャー」と言った後に、どんな風に、どんな感じだったんですか? と聞いてくるが、ほんとそういうのはやめてほしい。
「それにしても本当に残念です。ユウマさんくらいの魔力を持つ男性と番になれれば強い力を持つエルフが生まれるかもしれないのに……」
サマラは一人呟きながら俺の下半身に視線を向けてくる。
それに合わせて他のエルフ達の視線も――。
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