第344話

「ユウマさん、申し訳ありません。殿方は異種族の方でも受け入れているのですが、女性となると――」

「お前たちにも事情があるのは理解しているつもりだが、リネラスの事をリネラスの事を出来そこないのエルフと言っていた事にかんしては、今後、そういう事はやめてほしい」

 

 俺の言葉にサマラが顔を上げて「それは――」と、途中で言葉を止めると。

 エルフの民族衣装である、緑色の染め上げられたスカートの裾を握りしめ「それは、エルフの秩序に関わる重大な問題です。こちらから接触する事は控えますけど、止めることは難しいです」とはっきりと告げてきた。


「あの――ユウマさん……どうしてリネラス達、ハーフエルフが嫌われているかですけど彼女達は男性と床を共にすることを拒むんです。ですので、エルフの種族繁栄に影を落しかねないので――」

「――え?」


 今、何か重大な言葉が聞こえたような……。


「そ、それって……つまり魔力を見る精霊眼が無いから出来損ないと言ってるのでなくて男女のつき合いに対して大らかではないから、ダメだと?」

「はい!」


 俺の言葉に、エイフィルが自信ありげに答えてくる。

 周りのエルフ達を見渡しても全員が頷いているところを見ると、それは事実なのだろう。


「ユウマさん、私達が魔法を使えないだけで、同族の人間をそこまで差別するわけがありません。ハーフエルフは貞操観念が高すぎて困るんです。リネラスは、幼馴染でしたから何人も男性の奴隷を連れていったんですけど――リネラスは、彼女は好きな人以外とは、嫌だと――」


「ま、まるで――サキュバスみたいなエルフだな……」


 俺の言葉にサマラ達は首を傾げてきたが、どうやらサキュバスというのは存在しないらしいな。

 ――っていうか、どうして俺の脳裏にサキュバスと言う単語が自然と思い浮かんできたのか。

 これも俺の幼い頃からの謎知識に依るモノなのだろうな。


「まあ何はともかくだ、貞操観念については置いておくとしてだ。あまりリネラスたちにはちょっかいを出さないでもらえるか?」


 俺のお願いにサマラ達は、「まぁ――接触しなければいいだけですし……」と互いに呟きあっている。

 とにかく余計な問題になることは避けられそうだな。

 それだけでも宴に来た価値はあるというものだろう。


 そこで何を思ったのかエイフィルが「そういえば、ユウマさんはいつまでエルフガーデンに滞在される御つもりなのですか?」と聞いてきた。


「いつまでか――」


 俺は、エイフィルの問いかけに、何と答えていいか迷ってしまう。

 いつまでいるかどうかについては、現国王であるエルンペイア王に向けてのユリーシャが率いる解放軍が起こした内乱が治まるまでは、正直なところ何時まで滞在するのか見当もつかない。

 物資などを、このまえ町で数か月分購入してきたがそれで足りるかどうかも分からないからな、

 それにエリンフィートに頼まれたエルフの体質改善の問題もあるし。

  

「正直なところ、見当もつかないな。まぁ、しばらく滞在するってことで見ておいてくれればいい」


 すると、サマラとエイフィルが身を乗り出すように俺に顔を近づけてくると「本当ですか?」と、問いかけてくる。

 ちょっと近いから少し離れてほしい。


「――お、おう」


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