第346話

「……すまないが、俺は売約済みだからな!」


 まぁ、実際は売れてはいないが、ちょっと積極的すぎる女性には引いてしまう。

 

 俺の言葉を聞いたエルフ達は「ええー……」と言いながら、熱い視線を俺の下半身に向けてきている。


「悪いが俺は、何人もの女性と関係を持つようなハーレムは目指していない。だから期待しても無駄だぞ?」

「本当に目指していないんですか?」


 アンネが俺に問いかけてくるが、俺は「ああ、目指していない」とハッキリと言いつつ頷く。

 すると、サマラがキリッとした表情で、「ユウマさん! 私達だって、そのくらいは承知しています! ハーレムなんて女性に対する冒涜です! ですから……全員を正妻にすればいいんです!」と言ってくる。


「お前は、何をキリッとした顔で言ってくるんだ! 少しは自重しろよな!」


 俺の言葉にサマラは首を傾げながら「他のエルフは、強い異性の子種だけでもいいと言っています! それと比べれば遥かにマシです!」と、熱く語ってくる。


 サマラの言葉に、俺は心のうちで溜息をつきながら、心の中で、こいつら本当にエルフかよ! と突っ込みをいれておく。

 もう、こいつらサキュバスって言っても間違いないと思うくらい性欲に忠実だし、エロフとサキュバスを足してサキュロフって呼んでもいいくらいだろう。


「すまないな、俺はサキュロフには興味はないんだ!」

「ユウマさん、サキュロフと言うのはなんでしょうか?」


 サマラが俺に質問してくるが、まぁ性欲に忠実な女の事だと言っても問題になりそうだし言わずにおく。


「それは、素敵な女性に贈る言葉だな」


 まぁ適当に言っておくか。


「素敵な女性に贈る言葉――それが、サキュロフ……それはすばらしい名前ですね!」


 アンネが、とても喜んでいる。

 俺は、その様子を見て少しだけ罪悪感に蝕まれたが――。

 まぁ、いっか! と自分を無理矢理納得させる。


「ちなみに、サキュロフというのは種族名だからな!」

「種族名……つまりエルフみたいなものですか?」


 

 俺はサマラの言葉に頷く。

 すると、サマラや他のエルフ達が神妙な顔つきで話合いを始めた。

 どうやら、彼女たちもかなり酔ってきているようだし、そろそろ御暇をした方がいいかもしれないな。


「――なあ、俺は、そろそろ……」

「ユウマさん!」


 俺の言葉を遮るようにサマラが話しかけてきた。思わず「お、おう」と、俺は途中まで言いかけてきた言葉を呑み込む。

 

 すると、サマラが「たしかにユウマさんの言うとおり、私達はエルフと言う種族名に少し固執していたのかも知れません」と、神妙な顔つきで語ってくる。

 俺は思わず「え? エルフという種族に固執しないとかお前ら、どこに向かうつもりなの?」と、俺は思わず突っ込みを入れたくなったが黙っておく。


「これからは種族名をサキュロフで統一した方がいいかも知れません!」


 俺が突っ込みを入れないばかりに、サマラがとんでもないことを言い出した。

 やばい! ここは、きちんと突っ込みを入れておかないとダメだ!


「とりあえず落ち着け! 代々エルフって種族名を使ってきたんだからエルフじゃないとダメだろ? 通りすがりのAに言われたから種族名変えたとか! そういう適当なのは良くないから! お前ら酔ってるんだよ! それに、そんなの聞いたらエリンフィートとか絶対怒るからな!

「それは……残念です。とても良い種族名だと思ったのですけど……今度、族長に提案してみますね」

「そ、そうか……ま、まぁ、がんばれよ。ついで俺が言ったということに関しては――」

「はい! きちんとユウマさんが素晴らしい種族名を提案してくれたと族長に、お伝えしておきます!」

「いや、別に言わなくてもいいから……」


 それに、エリンフィートとか絶対に許可出さないと思うし。

 それにしても、本当にこいつらエルフは人の話を聞かないよな……。

 

 ――っていうか、俺の周りに集まってくるやつで、常識ある人間って俺を含めたらイノンとユリカとエメラダくらいじゃないだろうか?

 

「とにかくだ。今日は、このくらいで宴をしめないか?」

 

 これ以上、宴をしていても時間の浪費にしかならない気がするからな。


「ええー……」


 エイフィルが不満そうな顔で俺を見てくる。

 アンネや他のエルフ達も、ジッと俺を見て何か言葉を待っているかのよう。

 なんだが、俺の一言で宴が静まり返ってしまっていた。


「――あ、その……そ、そうですね。ユウマさんも森の中を戻らないといけないんですよね?」

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