第342話

 三つ編みにした15歳くらいの容姿をした女エルフが、俺にお酒を注いでくる。

 お酒は飲めなくはないのだが――。


 注がれていく緑色のお酒を見ながら……って!? 緑色? お酒って緑になるものだったか? 俺は自分の知識を総動員して調べるがオリーブオイル以外、見当たるものが無い。

 それにオリーブオイルはお酒でもないし……。

 だいたい、緑色って青汁だと思うのだが……そんな物を宴会で出すとかだめだろう?

 

「な、なあ?」


 俺はリンスタットさんに出してもらった青汁もどきはまずかったと震える声を抑えながら室内のエルフ達に話しかける。


 全員が、次の俺が話す言葉を待っているようでキラキラと澄んだ瞳を俺に向けてきている。


「実は俺……未成年だから酒が飲めないんだよ」

「ええー……未成年って何ですか?」


 金色の髪の毛の一部をカール巻きした美人なエルフが問いかけてくる。

 さらには室内を見渡すとサマラを加えた11人のエルフ達じはとても興味あがある瞳で俺をみてきており――。


「若いうちにお酒を飲んだらいけないと言うやつだな――」

「そ、そうなんですか?」

 

 俺にお酒を注いできたこれもまた美人なエルフは、落ち込んだ表情をして「ごめんなさい、お酒を進めて本当にごめんなさい」と謝罪してくる。

 

「い、いや――ま、まぁ……せっかく注いでくれたんだし飲んでみるか……な……」


 俺は緑色の液体が入った木のコップに口を付けて一息で飲み干す。

 海の迷宮リヴァルアで俺の体は、一切の毒を受け付けないが……。

 不味い味は感じるわけで。


「――くっ、まず……くはないな……」


 潤んだ瞳で俺を見てくるお酒を注いできたエルフが視界に入り、咄嗟に嘘をついてしまっていた。

 はっきり言って、ヤバイくらいまずい。

 リンスタットさんに出してもらった例の青汁らしき物を飲んで耐久を付けていなかったら耐えられないくらいの不味さだ。


「さて、主賓のユウマさんも口を付けられたことだし私達も飲もう!」


 サマラの言葉にアンネを含んだエルフ達は、俺が飲んだのと同じ緑色の飲み物を口にして「やっぱり、緑葉酒は美味しいですね!」と、語っている。

 どうやら、俺とエルフの味覚は違うらしい。

 そうなると――。

 俺はテーブルの上に置かれている緑色の料理を見る。

 一般的な人間である俺とエルフの味覚が隔絶してるほど違うってことは……。

 食べ物の味も違うのではないだろうか?

 俺は喉をゴクリと鳴らしながら、一番まともそうな赤い果物を切り分けたような料理を手に取る。

 

「ユウマさん! それは一か月に1個しか取れないレッドパプリカを料理したものなんです!」


 サマラが元気よく俺に話しかけてくるが、パプリカってたしかピーマンじゃなかったか? と俺は一人――心の中で突っ込みながら、咀嚼する。


「ふむ……」


 とても不味い。

 なんだよ、これ――緑特有のエグイ味がする。

 これだと絶対、灰汁とかとらないとダメなやつだろう。


「聖人様! どうですか? 料理は、このメルンが作りました!」

「そ、そうだな……とても原始的というか素朴的な味付けでいいと思うぞ……」


 こんなくそ不味い料理なんて食っていられるかーと皿を投げつけたい気分であったが、やはり美人なエルフが、不安な表情で俺からの評価を待っているとなると、そう簡単に酷いことなど言えないわけであって……。


「よかったです……私、皆から料理もっとうまくなりなさいって言われてて……でも聖人様にそういわれて少し勇気が持てました!」

「そうか……が、がんばれよ」


 おいおい、歓迎の料理なのに料理苦手な奴に作らせたらダメだろう? と俺は思わず心の中で突っ込みを入れたが口にすることはしない。

 さすがにわざとやっていたら怒るかもしれないし、男が作って不味かったなら殴るかもしれないが――。



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