第341話

「ああ、悪い。サマラ、ちょっとどいてくれないか?」


 俺の上に乗るような形になってしまっているサマラに退いて貰うように伝えると、サマラは一瞬、顔を伏せると潤んだ青い瞳で俺を見てきて「え、えっと……あの……ユウマさんは…………」と、呟いてきたところで言葉を止めてしまう。

 

 そこで俺はようやく気が付く。

 サマラの様子を見てる限り潤んだ瞳、赤い頬で俺に言い寄るのは……まるでセイレスに酷似しているように見える。

 

 これは――エルフ特有の病気なのではないだろうか?

 

「お、おい――サマラ、落ち着け! じつはお前はエルフ特有の病気に今かかって!」

「そんなことないです! あの……ユ、ユウマさんの力強い戦いを見ていまし――「サマラ様! 宴の用意が出来ました!」――ええ!?」


 声がした方を見ると、そこにはアンネが立っていて顔を真っ赤にして俺たちを見てきていた。


「あ、あの――サマラ様は、何を抜けがけじゃなくて、何をこんなところでしてるんですか? サマラ様の様子から絶対に恋人の誓いの塔に居るかもって言っていた人がいましたけど! いくら族長代理とは言えひどいです!」


 それだけ言うとアンネは走り去ってしまったが――。

 なんだかメンドクサイことに巻き込まれるようにしか思えない。

 サマラは、名残惜しそうに俺の上から退くと「ユウマさん、それでは宴まで案内しますね?」と語りかけてきたが――。


「なあ。俺、帰ってもいいかな?」


 何だか宴にいっても嫌な予感しかしないんだが。


「――え!? そ、そんな……」


 サマラは振り返って、顔色を真っ青にすると「お願いします、これでユウマさんが来られなかったら大変なことに――」と言ってきているが正直、サマラがどうなっても俺にはあまり関係なかったりするわけで。

 

「まあ、あれだ貸し一つな!」

「…………は、はい。ありがとうございます」


 俺の言葉に、サマラは頭を下げてきた。

 

 


 サマラと共に展望台を降り、樹上の上に存在している幅3メートルほどの木の板で作られた道を歩くこと10分ほどで、目的地に到着する事ができた。

 目の前に存在している建物は、俺の実家と同じくらいの大きさであった。


「ここが、そうなのか?」


 宴をすると言った割には、大きな建物で無かったことから俺は少し拍子抜けしてしまう。

 俺の言葉にサマラは少し俯きながら「はい」答えてくる。


「なるほど……」


 今一、よく分からないが宴と言うのは大勢の有力な者が集まってるすような物ではないのだろうか?

 エルフの習慣については今一理解が及ばないな。

 これならリネラスやセイレスに聞いてから来るべきだったかもしれない。


「ユウマさん? どうかしましたか?」

「いや――。なんでもない」


 まぁ、何かあれば何かすれば問題ないだろう。

 【流星】の魔法とかな!


 木で造られた建築物の中に入ると、そこには大きなテーブルの上に多種多様な果物や野菜だけの炒め物や野菜が入ったスープなどが置かれていた。

 つまり――食卓は緑一面で……。


「ユウマさんは、あちらへどうぞ!」

「――あ、ああ」


 俺は部屋の中にいる美女だらけのエルフ達の近くを通って一番奥の上座らしき場所へと座った。


「ささっ! ユウマ様! こちらのお酒などどうぞ!」


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