第333話
俺の問いかけに目の前の少女は答えてくる。
どうも俺には理解ができない。
基本、族長ってのは部族の指導者である。
そのためには豊富な経験が必要だ。
その経験が、この少女にあるとはとても思えないんだが……。
「私は1000年以上生きております。ですから、疑いの眼差しを向けるのはやめてほしいのですが?」
エリンフィートと名乗った美少女は俺を真っ直ぐ見つめながら、こちらが思っていた事に対しての答えを提示してきた。
1000年以上生きてると言うのは些か理解というか度を超えている。
ただ、相手が嘘をついてるようには見えない。
まあ、どちらにせよ、相手が名乗ったのだ。
こちらも名乗らないと問題だろう。
「俺は、ユウマという名前だ。一応、冒険者ギルドに登録している。職業は魔法師といったところだな」
俺の言葉にエリンフィートは、微笑みかけてくると。
「はい、聞き及んでおります。それに代々、巨大な魔力を持つ聖人様はこの地を通り大陸を巡礼をしていくのが過去からの定めですので……」
巨大な魔力ね……。
たしかに俺は、人とは違う魔法行使を行う事ができるが……。
それが巨大な魔力と繋がりがあるかどうかと聞かれれば、あるんだろうな。
リンスタットさんも同じ様な事を言っていたし。
「大陸を巡礼?」
「はい」
俺の問いかけに即答でエリンフィートは頷いてきた。
そして、巡礼という言葉に思わず――めんどくせーという考えが浮かんでくる。
するとエリンフィートは立ち上がり俺の両手を触ってくると端正な眉根を寄せて俺の目を見てきた。
「あの……ユウマ様。エルフ達より魔法が使えると聞いておりましたが――」
「ああ、使えるな」
「えっと……すると、エルフガーデンの外に出ているエルフに祝福を受けたのですか?」
「いいや、受けてないな」
問いかけに答えるとエリンフィートの顔色が陰り「え? ――聖人様は、エルフの祝福を受けないと土地神からの力を受けられず魔法が使えないはず――」と呟いている。
「まぁ、もしかしたら俺が普通の聖人で無いという可能性もあるからな。それに、そもそも俺とか魔王だし!」
「ま、魔王!?」
エリンフィートは、頭を傾げて俺を見てくる。
どうやら、エルフの族長は魔王という言葉を知らないようだな。
まあ、知らなければ知らないで別にいいが……。
「つまりだな……」
「ユウマ様は、すでに魔法が使える。つまり、すでに聖人として覚醒していると?」
「いや、俺は他人の為に動きたいとか全然思ってないからな。聖人からは程遠いと思うぞ? それに聖人という存在が、どんな存在かすら知らないからな。念のため聖人は何が出来るか教えてくれるか?」
俺の言葉に、エリンフィートの緑色の瞳が僅かに揺れ動く。
聖人という存在がどういうものかを教えていいのか考えてるような節が見られる。
エリンフィートは、しばらく考えたあと。
「わかりました。説明させていただきます。まず、聖人様は回復魔法が得意です」
ふむ。――たしかに回復魔法は得意だな。
俺の回復魔法というか、肉体細胞蘇生の無理やり回復させる魔法はかなりの物だし。
さらにエリンフィートの語りは続く。
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