第306話

 リネラスは俺の言葉尻に言葉を被せるように答えてきた。

 灰色の光点、おそらくエルフと思われる者の数は30。

 それらがエルフガーデンの木々の上で、俺たちが侵入すれば取り囲めるように移動していく。

 配置が終わったからなのか、3つほどの灰色の光点が近づいてくる。


「おい! そこの人間!」


 目の前にそびえ立つ樹木の枝に乗ってる耳がない種族――エルフの女性が俺に向かって話しかけてきた。

 エルフはリネラスと違って豊満な体つきをしており、髪の毛も太陽の陽光を照らして綺麗というか神秘的に見える。

 もちろん、セイレスと同じく耳は長く尖っている。


「リネラス、あれがエルフなのか? 俺の考えてるまな板エルフとは違うんだが?」

「ま、まな板って……ユウマが何を言いたいのか良くわからないけど、かなりイラっときたんだけど!」


 リネラスが俺の体を叩いてくるが、リリナと違って痛みは感じない。

 俺とリネラスが話し合っていると俺に話しかけてきた樹上のエルフがジッとこちらを見てきていた。

 女エルフ達は、全員豊かな物をもっていてまな板リネラスとはまったくの真逆でありとても神秘的な美人。

 そんなエルフが、まったく問いかけてに答えない俺たちに苛立ちを覚えたのか「貴様! 何の目的でエルフガーデンに近づいた!」と再度、問い詰めてきた。


 何が目的でエルフガーデンに近づいたと言われてもな……。

 核心に触れずに答えておくか。


「ユウマ、ユウマ」


 リネラスが俺の洋服の裾を引っ張りながら小声で話しかけてくる。


「どうした? お前があいつらと交渉するのか?」

「ううん、そうじゃなくてね。絶対に喧嘩腰で話さないでね。ユウマはすぐに相手を怒らせる発言をするから。そうで無くてもエルフは、気位が高い種族だから!」


 ――なるほどな。

 エルフは高貴な種族だから理論か。

 それなら俺の知識の中にもあるぞ?

 気難しい上司をいかにうまく利用するかという知識がな。

 俺はリネラスの肩に手を置く。


「なるほど。まぁ、交渉事は俺の得意分野だから任せておけ!」


 俺はリネラスを安心させるように力強くリネラスの忠告に答える。

 するとリネラスは不審な色を瞳の奥に浮かべると。


「まって! ユウマ待って! やっぱり私が話した方がいい気がしてきた!」

「おいおい、何を言ってるんだよ。こう見えても、俺は社交的だから大丈夫だぞ? 少なくても相手の弱みに付け込むような真似はしないからな」


 俺の言葉にリネラスも心あたりがあるのか、「うぐっ!」と、言うと「わ、わかった……ユウマに任せる」と、しぶしぶ引き下がっていく。


 まぁ俺も相手に問題が無い限り喧嘩腰で話す事はないからな。

 なのに、俺が社交的だと言ったとたんにリネラスを含む全員から冷たい目で見られたんだが解せない。


「はぁ……とりあえずユウマに任せるわ。問題起こしたら間違いなく戦いなるから気をつけてね」


 リネラスは、あきらめムードで俺にエルフとの交渉を託してくる。


「ああ、任せておけ!」


 俺は頷きつつ目の前のエルフ達を見上げる。


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