第307話
「実はエルフガーデン内のエルフの集落でしばらく休ませてもらおうと思ってきたんだ」
「それは許可できない!」
「おい! 即答で却下されたんだが……」
俺は、横に座っていたリネラスに小声で話しかける。
リネラスは、額に手を当てると「もうすこし遠回しに話を持っていかないとダメ」と言ってくる。
そんな事を言われても、こちらの考えを先に提示しておかないとダメだろうに。
「サマラ様、もしかしたらアレは……」
「どうした?」
俺とリネラスが話をしている間に、樹上のエルフも何やら話し合いを始めていた。
話が終わるのを待っていると。
「たしかに……男……あの魔力の量は……」
いつの間にか女エルフばかり集まって樹上で何やら話合いというか会議のような事をしている。
樹上のエルフ達の話合いは中々終わららないようで、金髪の女エルフ……サマラと呼ばれたエルフが周囲のエルフと必死に話合いをしている。
「ユウマ。これはマズイかも……」
リネラスが眉間にしわを寄せて俺に語りかけてくる。
「ああ、たしかにな……こちらの話をまったく聞かず、あいつらは身内だけで必死に話合いをしている。もしかしたら、戦闘になるかもしれないな」
「ううん、そうじゃなくてね。ユウマが危険だって言ってるの!」
俺が危険? 何を言ってるのか分からないな。
二人で話をしていると会議というか話合いが終わった樹上のエルフ――サマラと呼ばれていたエルフは俺を見下ろしてくると「よし! そこの男とその一向、エルフガーデンに入っていいぞ!」と、告げてきた。
「リネラス、どうやら戦わなくて良くなったみたいだぞ?」
俺の言葉に「ああー……これはユウマが大変な事になりそう……」と、呟いているが戦わないなら問題ないだろうに。
とにかく、このまま森の前にいても仕方がないからな。
「分かった! 村まで案内してもらえるか?」
「うむ! 今、そちらにいく!」
金髪の美少女エルフが俺の傍まで近づいてくる。
「私の名前はサマラという。貴方の名前は――って!? ど、どうして……ここに……ここに貴様がいるのだ! 出来損ないのエルフである貴様が!」
先ほどまでの友好的な態度から一遍しサマラは、リネラスを指さして吐き捨てるように言葉を紡いできた。
サマラの言葉を聞いたリネラスは唇を噛みしめると俺を方を見てきた。俺はサマラが言った出来損ないのエルフと言う言葉に疑問を抱き、「リネラス、出来損ないってどういう――っ!? どうしたんだ?」俺は、普段はあまり意思表示をしてこないセイレスの方を見る。セイレスは、俺の脇腹をつねってまで言葉を止めてきたのだ。つまり、俺がリネラスに聞こうとした事は、何か問題が……。
俺はあわててリネラスの方を見る。
するとリネラスは体を震わせたかと思うと帆馬車の従者席の横からから下りてしまう。
「リネラス?」
俺は、名前を呼びながら手を伸ばす。
するとリネラスは一瞬、思い詰めたような表情を俺に見せてくると、リネラスはエルフガーデンの森の中へと走り去ってしまう。
一体何がどうなっているんだ? 理解が追いつかない。
とりあえず魔物が魔物がいる場所に、戦う力がないリネラスを行かせるわけには――。
従者席から降りようとしたところで俺は立ち止まる。
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