第303話
俺はリネラスの方へ顔を向けてニコリと微笑む。
「ダメよ! ユウマ、絶対ダメよ! こんなところで森を破壊したら、エルフガーデンのエルフを敵に回しちゃうから!」
「大丈夫だ、敵に回ったら話し合いをすればいいだろ?」
リネラスが両手で頭を押さえながら「もう、この男はー」とか叫んでいるがいつもの事だから放置しておくことにしておくか。
まあ、どちらにしても……この俺に攻撃を仕掛けてくるんだ。
すでに、俺の【探索】魔法の範囲全ての木々が赤い光点に代わってるからな。
相手も俺も互いに敵として認識したわけだ。
それなら楽でいいじゃないか。
「まぁ、こいつらの不運は男女差別で俺だけを攻撃してきたことだな」
「違うから! それ特性だから!」と、リネラスが必死に言ってるが、すでに戦いの火蓋は切って落とされたのだ。
そして、エルフガーデンの魔物の方から俺に攻撃をしてきた。
つまり、今からする事は正当防衛であって俺は悪くない完璧な理論があれば、きっとエルフさんも理解してくれるだろう。
俺は、広範囲無差別大量破壊魔法【流星】を発動させるために上空、数キロメートルの大気を構成している原子を組み直した後に分子結合させ直径数センチの金属の塊を作りだして地表に向けて音速の速度で降下させる。
重力加速度を加味した物質は上空から落下し次々と木々を根こそぎ吹き飛ばしていく。
そんな様子を見ていたリネラスが「あ……ああ」と、ショックを受けているが仕方ないのだ。
そして次々と落下する数万に及ぶ金属の欠片でエルブンガストの木々はキレイに消し飛んだ。
「まっ! こんなところか?」
後ろを振り返るとそこには、真っ白に燃え尽きたリネラスの姿があった。
かなりショックを受けていたようなのでリネラスは放置しておくことにする。
まぁしばらくすれば復活するだろうし。
しばらくすると、他のメンバーが合流してくる。
そして、誰もが真っ白に燃え尽きたリネラスを見た後に――。
「すごい音がしたと思ったら……綺麗に更地になっていますね」とイノンが話しかけてきた。セレンは、「さすがお兄ちゃんなの」と語りかけてきた。
ユリカは、元花屋らしく「木々が生えて森になるまで時間がかかりそうですね」と呟いている。
そして、セイレスに至っては首から下げている黒板に「困惑」と書いて見せてきた。
「まぁ、それほどでもないさ!」
「誰も褒めてないからああああああああああ」
先ほどまで真っ白になっていたリネラスが叫びながら立ち上がって絶叫してきた。
「まぁ、やってしまったことは仕方ないんだ。俺は過去を振り返らない主義だからな!」「
「これ、絶対にエルフガーデンのエルフにバレたら戦いになるよ」と、言っているがその時はその時だろう。
それにきちんと、話をすれば相手も俺が人畜無害な一般人で平和主義者だと言う事を理解してくれるはずだ。
「それにしても、すごいですよね」
「う、うん……」
イノンが感心半分、呆れ半分と言った感じで周囲を見ながら呟くと、ユリカが頷き答えている。
まぁ、やってしまったことは仕方ない。
山と山の間の深い渓谷には先ほどまでは澄んだ小川がいくつも流れ豊かに多くの木々が生い茂っていたと言うのに、今では見渡す限り荒野と化している。
「イノン、とりあえず……帆馬車を出して進まないか?」
「え? あ……はい、そうですよね」
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