第302話
発動していた【探索】の魔法が、百を超える木の実の飛来を俺に教える。
「リネラス、下がっていろ」
「え? あ……う、うん。また、飛んできたの?」
俺は、リネラスの問いかけに頷く。
そして【身体強化】の魔法を解除する。
先ほどは、何かあったらまずいと思い念のために肉体を強化していたが、一度種明かしをすればすれば大したものでもない。
俺は前方を見ながら飛んでくる木の実をすべて両手で弾き飛ばしていく。
弾き飛ばされた木の実は周囲の木々を抉り、地面に埋まる。
飛んできた百を超える木の実を弾き飛ばしたところで、【探索】の魔法が次の木の実の飛来を知らせてくる。
「キリがないな……」
「ユウマ、言いにくいけどね」
「なんだ? 今は飛んでくる木の実の対応に忙しいから2行で頼む」
「それは男にしか飛んでこないの……」
「はあ? 無差別じゃないのか?」
「う、うん……」
リネラスは頷いてくる。
たしかに、先ほどからリネラスや後ろの女性陣には木の実は飛んでいってないな。
つまり、この木の実が狙っているのは俺だけということになり仲間を守る必要はない。
「わかった! なら、いくらでも対処の方法があるな!」
「え? まって! ユウマ!」
リネラスが何か言っているが、この俺に攻撃を仕掛けてきたのだ。
きちんとやり返しはさせてもらう。
木の実を飛ばしてきている樹木へと走って向かう。
もちろん時速200キロメートルで飛んでくる木の実は、すべて避けていく。
俺の行動が変わったことにようやく気が付いたのか、樹木の攻撃パターンが変わり断続的に木の実を飛ばす方法から、一斉に木の実を飛ばす方法に切り替えたようで飛来してくる木の実が数倍に跳ね上がる。
その数は500近いが……。
「ぬるいな!」
俺は、【身体強化】の魔法を発動させ肉体の細胞強度を一気に跳ね上げる。
そして、木の実を避けることもせず突っ込む。
飛来してくる木の実は、俺の体に傷一つ与える事はできず、音速に近い移動速度で走っていた俺と当たった事ですべてが身体に当たった瞬間に砕ける。
「見つけた!」
俺は目の前に見えた樹木に近づくと下段蹴りで直径5メートル近い大木を圧し折る。
悲鳴を上げながら樹木は倒れると粉々に砕け散った。
「なるほど……一応は、これも魔物の範囲に入るのか? よくは分からないが……」
俺は一人呟いていると、リネラスは息を切らせて走ってくる。
距離はかなりあったというのに、中々の健脚だな。
「どうした? そんなに慌てて?」
俺はリネラスの方を見ながら話しかけると、リネラスは「ユ……ユウマ。私……絶対攻撃したら駄目って言ったのに」と、話してくるが相手から攻撃を仕掛けてきたのだ。そんなのはしらんな。リネラスは一言だけ俺にいうとかなり無理をして走ってきたのか、その場に膝をつくと両手を地面について息を切らせながらも俺を見て「ここの魔物は反撃されると周囲の木々と同化して際限なく増えて攻撃してくるの」と告げてきた。
「ほう……なるほど! つまり周囲の木々を全て破壊すればいいんだな!」
ずいぶんと簡単な解決方法があるじゃないか。
増殖する敵を倒すのは周りをすべて破壊すればいい。
戦略上、至極まっとうな事だな。
「ま、まって! そ、それって……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます