第301話

「ユウマ、どうしたの? 何かあったの?」


 前に進み出た俺をリネラスは不思議そうに見てくる。


「何かあったと言えば、何かあったのかもしれないな。俺たちというか……俺に向けて飛んできている」

「ユウマ!? そ、それって!?」

「ああ……何かは知らないが、手荒い歓迎のようだな」


 俺は、【探索】の魔法で飛来してくる物質を正確に確認しながら、何かあった場合に備えて【身体強化】の魔法を発動させ、その直後、飛来してきた物質を素手で受け止めた後に、掴んだ物を見る。


「木の実か? どうしてこんな物が飛んで来るんだ?」

「木の実が飛んできたの?」


 俺の独り言を聞いたリネラスに、飛んできた木の実を見せと、リネラスは「まだ、エルフガーデンに入ったばかりなのに……」と、呟いている。リネラスの呟きを聞きながら、俺なりに木の実の事を考察していく。


「俺が感知してから、着弾までを着弾までを計算すると、その速度は時速200キロメートルというところか? かなりの速度だな。あと問題は……」


 俺は握りこんでいた木の実を確認する。

 飛来してきたときに手の平で受け止めた感触もから、木の実が相当固いのは分かる。

 実際、かなり力を入れなければ砕けない。

 それに、砕けた木の実の断面を見ると直径5センチほどの木の実の殻は厚さが1センチほどある。

「これはやっかいだな……この木の実、飛んできたときに回転まで加わっていたぞ?」


 おそらく、人体に直撃すれば大怪我、下手をすれば死ぬ可能性もありえる。

 俺が考察していた事を聞いていたリネラスは、しばし思案顔をしていたと思うと「ユウマには、今の飛んできた木の実が見えたの?」と、問いただしてきた。


「ああ、普通に見えたが? それほどまで早くはないからな」

「早くないんだ……」


 リネラスが少し呆れた顔で相槌を打つように呟いてくる。

 まぁ、【探索】の魔法で木の実が事前に飛んでくる方向やタイミングが分かってさえいれば常人でも対応できるはずだからな。

 見える、見えないはあまり関係ないだろう。


「しかし、海の港町カレイドスコープでエルフガーデンについての情報収集をした時には、こんな木の実を飛ばしてくるような奴がいるとは聞いてなかったが、生態系が変わったりしたのか?」

「ううん、私もこんなところまで生存範囲を広げているとは思っていなかったから」

「生存範囲? つまり……元からいた魔物? 植物? どっちかは知らないが元から居たってことか?」


 リネラスの瞳には戸惑いと動揺の色が見てとれるが、「うん」と、はっきりと答えてきた。


「もともとは、木の実を飛ばす魔物は100年前から生まれたらしくて、エルフガーデンに続く渓谷――エルブンガストを抜けた場所のエルフガーデンの森の入り口に生えていたんだけど。でも、まだエルブンガストにすら到達してないのに……」

「ふむ……つまり、元々はエルフガーデンの渓谷を超えた場所に居たのが、繁殖して生存範囲拡大してきたということか?」

「う、うん。たぶん、それでいいと思うけど。でも、ユウマどうしょう? こんな事になってるなんて思わなくてエルフガーデン行きを決定したけど、これだと……かなりというかユウマが危険だと思う」


 リネラスは、俺が! という部分を強調して話てくる。 

 どうして俺だけが危険なのかよくは分からないな。

 もう少し、詳しく話を聞いた方がいいかもしれない。


「なあ、リネラス。お前が知っている情報を俺に――ったく!?」


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