第298話
「な……なんだ……これは……貴様は何をした!?」
ナイトメア・ロード――否、メモリーズ・ファミリーを見て。
「お前は、過ぎ去った思い出を誰かに見せる為の存在だったんだ」
俺はセイレスが黒板に書いた内容をそのまま伝える事にする。
下手に話を加えても意味を為さない。
そんな気がするからだ。
「私が……過ぎ去った思い出を誰かに見せるだけの存在……だと?」
「違う、お前は過ぎ去った大切な思い出を人に見せて安らぎや安心を与えるために作られた存在だったんだ」
「なんのために?」
俺は、メモリーズ・ファミリーの言葉に少しだけ頬笑みながら。
「お前が言ったろ? 人間は弱くて醜いって……だからだよ。人は過去を思い出を美化すると同時に懐かしく思うものなんだ。だからお前を人は作った。エルフ族であるセイレスだからこそ、魔法通信師だったからこそ気がついたんだろう」
「わ……私が、私が作られた存在だと……!? そんな事が認められる訳があるかー!」
5メートルを超える緑の巨人になったメモリーズ・ファミリーは体中を崩壊させながら俺に向かって突っ込んでくるが、俺はその巨人の体の横腹を蹴り吹き飛ばす。
「ぐはっ! 貴様……」
「なんだ? 憐れんで俺が攻撃を受けるとでも思ったのか?」
「くっ……」
俺は声を聞きながら、手に持った黒化したメモリーズ・ファミリーを見た後に周囲を見渡す。
すでに空は割れ、町の大半は消滅している。
「さて……お前の心臓部であるメモリーズ・ファミリーを破壊すればお前も消える訳だ、最後に言い残したい事があるなら」
俺がメモリーズ・ファミリーを握りつぶそうとしたところで……。
「ユウマさん!」
「ユウマ!」
リネラスとイノンの声が後ろから聞こえてきた。
振り向くと二人とも、こちらへと近づいてくる。
「目が覚めたのか……」
俺の言葉に2人が頷いてくるが、俺としてはさっさと離れてほしい。
まだ、ここはメモリーズ・ファミリーの影響範囲内なのだから。
「リネラス! イノン! すぐにここから離れろ! もう片がつく!」
俺がメモリーズ・ファミリーを握りつぶそうとしたところで「待って下さい! お兄ちゃん!」とセレンが、黒い色をしたメモリーズ・ファミリーを持っていた右手を両手で掴んできた。
「お前ら、何を言っているのか分かっているのか? こいつは俺達に手を出したんだぞ? それにいくら原因が人間に原因があると言っても手を出してきた時点で敵確定だ!」
「それでも! ユウマさん待ってください!」
俺は舌打ちしながらイノンの方を見てからメモリーズ・ファミリーの方へ視線を向ける。
すると、5メートル近くまであった巨人はすでに、大半が消失しており人の形に戻っており、その姿は俺の金貨100枚を銅銭に交換したラン・フェイフォンであった。
「忘れていた記憶を……思い出を思い出させてくれてありがとうございます」
イノンが頭を下げながら人の形となったメモリーズ・ファミリーに頭を下げると、メモリーズ・ファミリーは呆けた顔をしていた。
そして「お父さんに合わせてくれてありがとう……」とリネラスがはいつもとはまったく違う、素直な気持ちを発露し「パパとママに合わせてくれてありがとう」と、セレンが伝えると俺の右手に握っていたメモリーズ・ファミリーは黒色から鮮やかな青色へと変化した。
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