第297話
「それは本当なのか?」
俺はセイレスが見せてきた黒板を見て眉元を顰める。
それが本当ならこの町は――。
帆馬車は、花の都とラン・フェイフォンが語ってきたローランと外を隔てる鉄の扉に近づいていく。
「ユウマさん! 前方に扉が!」
ユリカが俺の名前を呼んでくる。
俺は帆馬車の中から出ると、後方から「この町からは逃げられんぞ!」と、声が聞こえてくる。
振り向くと人間の形をした闇の塊である悪夢ナイトメア・ロードが近づいてくるが……。
俺は、ナイトメア・ロードの言葉を無視し帆馬車から飛び降りると【身体強化】の魔法を発動し、高さ10メートル近い鉄の扉を蹴破った。
「バ……バカな!? 人間では開けられない重量なはず……」
「ユリカ! そのまま馬車を走らせろ! 俺はコイツに引導を渡す!」
「分かりました!」
ユリカは俺の言葉に頷きながら手綱を操り、帆馬車を走らせ町から抜けていく。
それと同時に町の建物が次々と風化し消滅していく。
「おのれ! 何故、貴様には我が力が効かぬのだ!」
ナイトメア・ロードの言葉を聞きながら俺は肩を竦める。
そして、「……さあな?」と言いつつ。ユリカが町から抜ける間の時間を稼ぐために帆馬車とナイトメア・ロードの間に立ちふさがる。
「そこをどけ! 人間が!」
跳躍して近づいてくるナイトメア・ロードの顔であろうかと言う部分に上段蹴りを繰り出す。
樹木を蹴り砕いたような感触が足を伝ってくる。
俺はそのまま右足に軸足の力を伝えて振り抜く。
常人を遥かに超えた脚力より繰り出された力により、ナイトメア・ロードの体が宙に浮くと縦回転しながら消滅しかけている建物の壁に接触・粉砕し建物の中に姿を消す。
「人間の分際で!人間の分際で!人間の分際で!人間の分際で!人間の分際で!人間の分際で!人間の分際で!」
建物を爆破して現れた5メートル近くまで肥大化した緑色の巨人であるナイトメア・ロードは無数の蔓を俺めがけて繰り出してくる。
俺はそれらを避けながら巨人の近くまで駆け寄ると下段蹴りでナイトメア・ロードの左足を粉砕した。
バランスを崩しながら膝をつくと俺を怒りの眼差しで見ながら。
「バカな……人間が……人間ごとき矮小で脆弱な存在が……どうして、これほどの力を……」
「そんなに人間が嫌いか?」
俺の問いかけにナイトメア・ロードは、目を見開く。
「当たり前だ!」
「そうか……どうして、そんなに人間が嫌いなんだ?」
「知らん! 知らぬ! 貴様ら人間は生きていてはいけない存在なのだ!」
恨む事に対して憎しみの発端すら、目の前の者はその記憶すらない。
深く溜息をつきながらセイレスが黒板に書いていた事に嘘がなかったと思い不憫に思う。
「そうか……なら、その怒りを全部、俺にぶつけてこい!」
俺の言葉を聞いたナイトメア・ロードは……メモリーズ・ファミリーの精霊は狂気の中で俺に向かってくる。
そして交差すると同時に俺は、ナイトメア・ロードの胸元に飛びこむと黒く染まっているメモリーズ・ファミリーを片手で引き千切る。
それだけでナイトメア・ロードは巨体を維持できなくなり次々と体が崩壊していく。
それに伴い町が、灰と化して光の粒子となって消える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます