第288話
目が覚めると私は廊下を歩いていた。
ふと前を見るとお父さんとお母さんの部屋の隙間から明かりが漏れ出していて、廊下を淡く照らしていた。
近づいていくと部屋の中が……扉が少しだけ空いていて見ることが出来た。
「ねえ! どうして! どうしてなの? どうしてイノンばかり可愛がるの!」
聞こえてきた声は、お姉ちゃんの声だった。
お姉ちゃんの声は涙に濡れている声、初めてきく声。
「お前はお姉さんなんだぞ?」
お父さんがお姉ちゃんを窘める声が廊下まで響いてきた。
「あなた! そんな言い方だと……」
続けて聞こえてきたのはお母さんの声。
「そうだな……」
お母さんの言葉にお父さんはしぶしぶ納得していたみたい……。
「どうしてお前に魔法を習わせているか分かるか?」
「分からない……私は魔法が使えるから?」
「半分は合っている、だが……本当は――」
声が聞こえない。
そして人の気配を感じて、ふと前を見ると、お姉ちゃんが廊下の先で立っていて私を背中におぶさっていた。
「イノンを! イノンを助けて! お父さん! お母さん!」
お姉ちゃんの声を聞きながら、お父さんとお母さんは……。
「イノンを助ける事が出来るのは……以前も話したとおりにお前だけにしか救う事は出来ない」
目の前で繰り広げられている光景は私が初めて見る物で……。
「でも……それじゃ……」
お父さんに言われた言葉を聞いたお姉ちゃんが青い表情をしながら、戸惑いの表情を見せた。
そして私はその光景に目を奪われた。
こんな記憶、私は知らない。
こんな場面、私の記憶にはない。
「双子で生まれた場合には、低い確率で魔力の保持量がまったくない子供が生まれる事がある。そういう時は、もう一人の子供に魔法を覚えさせる事で、余剰の魔力を奪わせる事が必要となる。その為には、魔法を使う勉強をさせなけらばならない。但し、余剰の魔力を奪うと言う事は2人分の魔力を、人間一人の器に注ぐことになる。その人間を人は、疎まずにいられるのだろうか……」
振り返ると、そこは両親の一室だった。
お父さんは手に持った紙を持って、俯いていた。
「あなた……」
そんなお父さんをお母さんが心配した表情で見て肩に手を宛てている。
「もう、アルバードさんがメモリーズ・ファミリーを原料とした薬を、イノンとあの子に飲ませたんだ。今日の夜にでも始めないとイノンの体は、もう魔力に耐えきれずに……」
お父さんは手に持った紙を握り締めると、お酒と思われる物を飲んでいた。
私は、お父さんがお酒を飲んだ時を見た事がない。
でも、何故か知らないけど……。
そこで場面が切り替わった。
そこは私とお姉ちゃんの部屋だった。
お姉ちゃんは、顔を赤くして体中から血を流している私を見ながら。
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