第287話
「アルバード、貴方……小さい子が趣味だったの?」
「ち、違うよ! 俺はエメラ、一筋だよ!」
冒険者パーティの30台? 40代くらいの男性が20歳くらいの女性に何か言われている。
私とお姉ちゃんがアルバードさんの前で首を傾げていると。
「はじめまして! えーと、このバカがアルバードって言ってね。気弱で神経質で駄目なところが多いんだけど将来はギルドマスターになるんだ!って言ってる痛い人なのよ? それで私が、エメラ。後ろにいるのがブルームにアルカネイラよ。 えっと……貴女たちのお名前は?」
最近、一週間くらいお客さんとして泊っている冒険者パーティの女性の一人エメラさんが自己紹介を私達にしてきた。
冒険者さんは、粗暴な人もいるけど中にはエメラさんみたいに話しかけてくる人もいる。
「えっと……イノンと言います」
「そっちの子は、似ているから双子の姉妹なのかな?」
「はい! 私の自慢のお姉ちゃんです!」
そういうとお姉ちゃんは少しだけ顔を赤くして私の服の裾を引っ張ってくると。
「もう他の人に私を勝手に紹介しないの! ご利用頂きありがとうございます。こちらの宿を経営しております娘イノンとユリーシャと言います」
「え、ええ……よろしくね。ユリーシャちゃん」
「はい、それでは失礼致します」
お姉ちゃんはお客さんに自己紹介をすると私の手を握って歩きだそうと――。
「二人ともこれを!」
アルバードさんが慌てて袋から黒く四角い物を2個、私の左手に握らせてくる。
慌ててアルバードさんの顔を見ると手を振ってくれていた。
私も慌てて手を振り返す。
すると、エメラさんと言う女性にアルバードさんは頭を殴られていた。
廊下をしばらく歩いて、家族がいつも食事をする部屋に辿りつくと私とお姉ちゃんはソファーに座った。
「もう、イノンったらすぐに誰とでも話をするんだから! 何かあってからじゃ遅いんだからね!」
「はーい!」
私は半分くらい貰った黒く四角い物に、興味を惹かれていてお姉ちゃんのいつもの小言にてきとーに答えていた。
「ねえ! お姉ちゃん! この黒くて四角い物って何かな?」
「もう……イノンは本当に私の話を聞いているの?」
お姉ちゃんは、お母さんと同じで小言が多い。
でも、お姉ちゃんもアルバードさんに貰った黒くて四角い2個の物に興味があるみたいで1個、手に取ると空中に魔法陣を描いた後に……。
「毒じゃないみたいね」と、呟いていた。
人がくれたのに、お姉ちゃんはとってもひどいと思う。
私は、もらった黒くて四角い物を少しだけ舐めて見る。
「お姉ちゃん! これ甘いよ!」
「イノン! 貴女、また……もう、この子ったらどうしてこんなにもう……」
お姉ちゃんは溜息をつきながら、お姉ちゃんも四角い黒い物を口に含んで――。
「これは黒砂糖ね。南部……商業都市エメラスで栽培されてるって本で読んだ事あったけど……あの冒険者の人達は他国の冒険者達なのかな?」
お姉ちゃんが難しそうな顔をして一人呟いているけど、私は口に含んだ黒砂糖? を転がしてるだけで幸せ!
今日も一日、少しだけ嫌なことがあったけど、それ以上に楽しい事もいっぱいあった!
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