第286話

 私とお姉ちゃんは、東に流れる名も無い小さな川から、フィンデイカの村に5分ほど歩いて戻った。

 フィンデイカの建物が見えてくると、宿の前でお母さんがウロウロして周囲を見渡している。

 何かあったのかな?


「お姉ちゃん、お母さんの様子が少しおかしい気がするの」

「……」


 お姉ちゃんは何も言わずに私の手を握ったまま歩き出した。

 私は手を引かれたまま仕方なく歩き出す。


 するとお母さんが私達に気がついたのか走ってくる。

 

「イノン! 貴女はどこに行っていたの!」


 お母さんは私の前で立ち止まるとすぐに怒ってきた。

 だって、私がいても邪魔にしかならないから……。

 そんな気持ちが湧きあがってくる。

 でも、言えない。

 するとお母さんに頬を引っぱたかれた。


 私は頬に手をあてながら、お母さんを見上げる。

 するとお母さんは座ると私を抱きしめてきた。


「心配したんだからね、村の外は危険だからって何度も言ったでしょう? 少しはお姉ちゃんを見習いなさい」

「……ひっく、ひっく……ごめんなさい、お母さん……うあああああああん」


 私はよく分からない衝動に胸を揺さぶられて泣いてしまっていた。

 



 気がつけば私は、自分の部屋のベッドで寝ていた。

 ベッドから降りると。


「眼が覚めたの?」

「お姉ちゃん……」


 お姉ちゃんは椅子に座って難しそうな魔法書を読んでいた。

 本を閉じるとお姉ちゃんは魔法書を閉じると木材で作られたテーブルの上に置いて、立ち上がると私の傍までくると手を握ってきた。


「今日のお姉ちゃん……なんか変」

「そう? 私は貴女のお姉ちゃんなんだから当たり前よ」

「うーん。うん!」


 部屋の扉を開けると、お姉ちゃんが最初に廊下に出た後に私も続いて廊下に出る。

 すると旅人の冒険者さん達の笑い声が聞こえてくる。

 笑い声がした方を見ているとお母さんの声で「おかえりなさい」と言う声が聞こえてきた。


 そしてすぐに、4人の冒険者たちの姿が廊下先に見える。

 すると一人の男性の冒険者が私とお姉ちゃんに気がついたのか手招きしてきた。


「お姉ちゃん、お客さんが呼んでるよ!」

 

 私はお姉ちゃんの手を握ったまま冒険者の男の人に近づく。

 お姉ちゃんが後ろから「もう、イノンたら知らない男性に近づいたら駄目ってお母さんに言われてるでしょう!」と呟いてきている。

 思ったより大きな声でお姉ちゃんが話した物だから声が廊下に響いてしまう。

 

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