第238話
俺はチラッとリネラスの方へ視線を向ける。
どうやら、完全に自分が【エターナルフィーリング】を購入してきたからこんな事になっていると思っているらしくリネラスの瞳には光はなく、「私は悪くない。私は悪くない。だって世界が悪いんだもん」とブツブツと呟いてる。
俺は、俯いて独り言をつぶやいているリネラスの頭の上に手を置く。
セレンは、俺の事をまっすぐに見て首を傾げている。
セイレスと言えば黒板にチョークで「すごいです! さすがユウマさんです!」と書いている。
イノンは、「早く宿屋直してほしいんですけど……」と、呟いているが、それは後でいいだろう!
「セレン、人間ミスの一つや二つはある! でも問題は、誰かに迷惑をかけたのなら、その原因を作った人間と言うのはきちんと責任を取るべきなんだ。それが正しい大人のあり方なんだ。だからどんな現実が待っていたとしてもそこから目を背けたらいけない。まして、世界が悪いとか私が悪くないなんてそんな言い逃れは最低だ!」
「で、でもお兄ちゃん、今、人間はミスの一つは二つはあるって……」
セレンがそう俺に問いかけてくるが、俺はそれを手を上げる事で止める。
「そうじゃないんだよ、問題は……そのあとに、いかにして償うかだ! 今回の【エターナルフィーリング】が魔物化して、カレイドスコープに拡散して町が大混乱に陥っているなら、きちんと責任を取るべきなんだ! リネラス、分かってくれるな?」
「まって! まってよ! え? どういうことなの? カレイドスコープが【エターナルフィーリング】で大変な事になってるの? あれは男性の浮気を調べるための花なのに? どうして?」
矢継ぎ早に問うてくるリネラスの隣に、木製の椅子を置くと座る。
「よく聞いてくれ。海の港町カレイドスコープは、おそらくだが……魔物化した【エターナルフィーリング】の影響をもろに受けて壊滅状態(主に男性陣が……)だ!」
「え、ええええー……。そんな能力が魔物化した事で……ゆ……ゆうまぁああ、どうじよう!私、どうじよう!」
「リネラス……宿を破壊したことはお金を稼いで支払って謝ればいいさ。リネラスは俺の仲間なんだ。お前がテロ騒ぎを起こしたとして、逮捕されても俺は待ってるからな」
俺の言葉にリネラスは頭を振る。
まさか、こいつ……弁償しない気では……。
「でも……でも……セイレスの話だと……中庭の花壇にダンジョンコアがあったかもしれないって!」
「リネラス……お前……」
まったく……セイレスの話が、ダンジョンコアの話が進展したら俺が困るんだが。
仕方ないな……。
「はぁ……分かったよ。リネラス、仲間の失態は仲間の責任だ。俺が何とか収集付けてやるよ」
「ユウマ!?」
「お兄ちゃん!」
「ユウマさん?」
そして最後にセイレスが黒板に書いた文字には「ユウマさんが何かを隠してる気がします」と書かれていた。
セイレス、心が読めるのか?
まぁ、とりあえずはカレイドスコープを全部処理してダンジョンコアを破壊して証拠隠滅を測れば、あとはどうとでもなるだろう。
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