第233話

「ああ、俺も考えてみた。突然、身分証提示を求めてきたこと。これは何かあると思う」


 俺は自分で言いながらこの3週間近く海の港町カレイドスコープ内で起きた問題ごとを思いだす。

 

 クルド公爵家の配下の兵士との戦いで周囲の民家や建物の屋根が崩壊、倒壊したこと。

 町の通りを勝手に魔法で壁を作り封鎖しさらに湖まで作りだされ放置される。

 良く知らない男を殴ったら壁を破壊して飛んで行った事。

 海神ウミゾーの襲撃で、それなりの被害にあった町。

 魔物の襲撃と、水竜の津波により町が壊滅。

 解放軍が勝手に駐屯して物資をせしめた事。


「ふむ……考えれば考えるほど海の港町カレイドスコープは、あまりたいした話題はないな」

「え!? 私が知ってるだけで町が2回壊滅してるんですけど?」


 ふむ……。

 たしかに言われてみれば、何度も町が大変な事態に巻き込まれているな。

 まったく……酷い物だ。

 これだけの問題を、この町が抱えていたとすると呪われているとしか思えない。

 きっと日ごろの行いの悪い奴が必ずいるに違いないな。

 

 ふう……まったく仕方ないな。

 普段からお世話している町だが、今回も俺が一肌脱いで町の問題ごとを解決してやろうじゃないか。

 方針が決まった以上、動くしかない。

 そう、俺は行動力のある男だからな。


「そうだな。イノンの言うとおりだ。世話になってる町だから、俺がサクッと問題を解決してくるか」

「さすがユウマさんです!」


 リネラスが俺を褒めてくるが、そんなに褒められると照れてしまう。


「それじゃいってくる!」

「ユウマさん! お気をつけて!」


 俺は、イノンと分かれると北門、東門から入らないで町へ入るルートを選択する。

 下手に門から入ろうとして、真実を隠されても困るからな。


 南西方向へ走っていき、海岸線へ出たあと海岸線に沿うように西へ走っていく。

 途中からは、歩ける場所が無くなり断崖絶壁となっていく。


 俺は、海の迷宮リヴァルアで過ごしていた間に強化された身体能力をフルに使い壁を走っていく。

 そして、港が見えてきたところで絶壁に手でぶら下がりながら【探索】の魔法を発動させる。


 俺は周囲に展開した高周波は、周囲の地形・物質・物体・生物を感知し俺の頭の中に光景として表示される。

 表示されていくのは緑色の光点とグレーの光点。

 

 ただ、一つ気になった点があった。


「グレーの光点が多すぎるな」


 俺は一人呟きながらも周囲に人がいない事を確認し港に足を踏み入れる。

 

 しばらく港付近を散策するがこれと言った物は見つからない。


「 ふむ……」



 俺は、港の倉庫の上に飛び上がる。

 高さ10メートル近い港の倉庫上に乗ると周囲に目を向ける。

 すると――人が通る道。その横一面に、多種多様な花が咲いていた。

 それあらは7色に光っている。


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