第222話

「ま、まぁ……ほら! そうだ! あれだよ! うん……何か好きな物でも奢るからさ!」


 何故か知らないが、とりあえずここは機嫌を取っておくほうがいいだろう。


「でも私に花を買ってくれるんだよね?」


 リネラスの言葉に俺は頷くと、セイレスが黒板を俺に投げつけてきた。

 俺は黒板が割れないように受け取ると、そこに書かれている文字を読む。

 そこには、「私にプロポーズしたのに!」と書かれている。

 いつプロポーズしたのか覚えてない……。


 そしてイノンと言えば……。


「……へ、へぇー。花をリネラスさんに贈られるつもりなんですか?」


 ――と、俺に向けて問いかけてくる。


「お兄ちゃん、女性に花を贈る意味を理解してないの?」

「あ、あまり理解していません」


 セレンの言葉に俺は丁寧語を使って答える。

 するとリネラス、セイレス、イノンの雰囲気がいつものようにやわらかい印象に戻る。

 

 先ほどまでの殺伐とした雰囲気が嘘のようだ!


「いいですか? ユゼウ王国では、女性に花を贈るということは一緒にこの花を育てていこうと言う意味があるのです。つまり結婚をしてくださいと言う意味があるのです」


 イノンが人差し指を立てて俺に説明してくるとセイレス、リネラス、セレンまでもが何度も頷いている。

 これは、とんでもない事を俺は仕出かしてしまったのではないだろうか?


 イノンは俺の様子を見てため息をつく。


「困りましたね。結婚してくださいと告白した張本人がその意味を理解していなかったなんて……そうです! もうこの際、私を含めて3人とも娶ってしまうのはどうですか?」


 リネラスとセイレスが、イノンの言葉を聞いて頷いてくるが話が飛躍しすぎてて困る。

 

 俺はリネラスの方へ視線を向ける。

 普段は、冒険者ギルドの青を基調とした事務服しか着ていないリネラスが白いワンピースを着ている。

 そして無造作に、いつも纏めてある髪はきちんと櫛で梳かしてから背中に流してあり、髪が太陽の光を反射して金色に光輝いている。

 そして顔にも薄く化粧までしている。 

 どうしよう、この感じ……リネラスの本気が感じられる。


 そして、いつも町娘が切るような踝まであるスカートのワンピースを着て、その上からエプロンをきているイノンは、ひざ丈までのスカートのワンピースを着ており、長い栗色の髪の毛をきちんと後ろで纏めている。

 そして化粧もきちんとしてあるのが一目で分かる。


 セイレスなんて、エルフらしい短いスカートに露出の高い上着を着ている。

 もちろんセイレスも口紅を差しており女性らしく見せているし、紫色の髪はウェーブまでかけてある。


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