第221話

「……い、いいわよ! 明日ね! 分かったわよ!」


 リネラスは、それだけ言うと上機嫌になりリネラス自身の部屋がある方へ歩いていってしまった。


「セレンもくるか?何か欲しい物を買ってあげるぞ?」

「お兄ちゃん、女の人に花を贈るのに別の子を誘うのはよくないの」


 ……どういうことだ?


「セレン、女性に花を贈る意味というのは何かあるのか?」


「それは秘密なの」


 ふむ。何かありそうだな……。

 まあリネラスの事だから大事にはならないだろう。




 ――翌朝。


 俺は、移動式冒険者ギルド宿屋の前で2人を待っていた。


「しかし遅いな……」

 

 俺は予定時間を越えても現れない2人を待ちながら一人呟く。

 たかが花を購入しにいくだけなのに、どうして用意にそんなに時間が掛かっているのか。


「セイレスさん、どうかしたんですか?」


 イノンとリネラスを、ジッと立って待ってる俺に近づいてきたセイレスさんに話かける。

 するとセイレスさんは顔を真っ赤に染めて俺が作った黒板に白いチョークで文字を描くと見せてきた。

 そこには、「私も一緒に行っていいですか?」と、書かれていた。


「別に構いませんよ! 一人より2人より皆で一緒に行った方がいいですから」


 するとセイレスさんは、黒板を再度見せてくる。

 そこには、「ありがとうございます!」と書かれていた。


「いえいえ別にいいですよ、気にしなくて」


 皆で行った方が気分転換になるだろうし、今の俺ならある程度纏まった数の騎士団が狙って来ても倒すは可能だからな。


「ユウマさん、お待たせしました! あれ? セイレスさん、どうかしたんですか?」


 イノンの言葉にセイレスが黒板を見せている。


「ええー! ユウマさん! どういうことですか?」


 イノンが俺の方へ視線を向けて問い詰めてくる。

 どうして怒っているのか分からない。


「いや、皆で行った方が楽しいかなと思って……」

「ユウマ! お待たせ! あれ? イノンとセイレスが揃ってどこかにお出かけなの?」


 リネラスがイノンとセイレスを見てから二人に話しかけた。

 すると――。


「えええー。リネラスさんも行かれるんですか?」とイノンが言いだすと、「え? どういうこと? もしかして……ユウマ! どういうことなの!? どうしてイノンとセイレスが一緒に行く事になってるの! 」と言いだした。


「いや、ほら、みんなで一緒に行ったほうがいいかなと思ってな……」

「お兄ちゃん最低です!」


 いつの間にか足元に来ていたセレンに、最低呼ばわりされてしまったがどうしてか分からないんだが……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る