第220話
そういうものなのか?
まあ、普段から職場の空気に慣らしておくというのも大事なんだろうな。
「ほら、ユウマ! ついてきて! 丁度、練習相手も欲しかったからね!」
リネラスが先ほどまで沈んでいた様子を見せないように高い声で俺の腕を掴んで話してくる。
俺は溜息をつきながら、どうやらリネラスは俺を元気付けようとしているのが何となく理解できた。
リネラスに連れられた俺はセレンの前に座らせられる。
そして、緊張からなのか固まっているセレンを見た後に、俺はリネラスを見る。
やはり9歳のセレンには、まだ仕事は早いんじゃないだろうか? と思ってしまう。
「お……」
「ん?」
セレンの言葉が聞こえてきた。
俺はセレンの方へ視線を向ける。
セレンは、顔を真っ赤にしながら上目遣いで俺を見てくると。
「……お、おにいちゃん……おかえりなさい……」
と、言ってきた。効果はバツグンだった。
気がつけば、妹のアリアにするみたいに自然とセレンの頭に手を置いて撫でていた。
「ユウマって小さい子が好みなの?」
リネラスが冷めた声で俺に語りかけてくるが、断じて俺はそんなんじゃない。
「俺には妹がいたからな……」
俺の言葉にリネラスが顔を伏せる。
「ごめんなさいね。辛い事を聞いたね」
「いやいや、生きてるから! 勘違いするな」
まったく気を使う時と使わない時の落差が、リネラスは激しすぎだ。
「ユウマが変な言い方するからでしょ! それとセレン、冒険者ギルドへようこそ! って言わないと駄目ですよ?」
「「はい」」
リネラスの言葉に俺とセレンは同時に答えて頷いた。
「そうだ! リネラス。イノンから宿屋の裏の花壇を使ってもいいと聞いたんだが、いま誤解させた事を踏まえて明日にでもリネラスが好きな花を海の港町カレイドスコープに購入しに行かないか?」
俺の言葉にリネラスが顔を真っ赤に染める。
「え?ユウマ、本当にいいの?女性に花を贈るってどういう意味か理解してるの?」
何をそんなに改まってるのか分からんが、そこまで気にいってくれるなら花を植えれば花壇を掘り起こしたりはしないだろう。
「ああ、もちろんだ。どうだ?買いにいかないか?」
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