第219話

 俺の言葉に、セイレスは……。

 涙を流し始めた。

 そして――俺は泣き疲れるまで頭を撫でた後に、彼女をベッドに寝かせた。

 部屋を出ると、そこにはリネラスが立っていた。


「その様子だと何もなかったようね」

「気がついていたなら助けにこい!」


 リネラスが気がついていたなら精神カウンセリングをしておけと思ったが口にする事はしなかった。何故なら――。


「……私には無理よ。だって知り合いだから……知り合いだからこそセイレスの悩みは解決できなかったと思うし、知り合いだからこそ届かない言葉だってあるから……」


 そんな思い詰めた顔をされると何も言えないだろ?

 まったく……。


「そうだな……ああ、一応依頼は達成してきたぞ」

「お疲れ様」


「でも意外だな? ガレー船を借りた船長は、早く帰ってきた事に驚いていたがリネラスはまったく驚いていないように見えるぞ?」


 俺の言葉にリネラスは微笑みながら頷く。


「うん、だってユウマが攻略に向かったのは、天然のダンジョンだから中に入れば時間は外部と隔絶されるからね。一年潜ってても外界では一日しか経過しないよ?」


 なるほど……。


「ダンジョンには天然とそれ以外のダンジョンがあるのか?」


「うん。主にフィールドダンジョンが養殖だね。世界に巡るエネルギーを具象化する形にして魔物を生み出す。つまりダンジョンコアが存在しない場所がフィールドダンジョンと呼ばれてるの。これは世界と連動してるから時間の経過は同じだね。逆にダンジョンコアが作り出してるダンジョンは外部と隔絶されるために時間の経過が異なるの」


 ふむ。なるほど……。

 つまり、俺が作り出した氷の大陸も俺と連動していたからその分月日が経って海水に戻ったという事になるのか?


「さてと……」


 リネラスが立ち上がると何かしら言っていたが、俺はじっとリネラスの様子を見る。


「ユウマはダンジョンコアを破壊したの?」

「迷宮は崩壊したが……」

「そう……それならいいんだけどね」


 リネラスが意味深な事を言ってきたが、その様子から不自然な処は見られない。


「それより、カウンターに座って何をしていたんだ?」


 俺の言葉にリネラスは頭を傾げる。


「ギルド職員なんだからカウンター席に座って雰囲気を感じるのも仕事だからね。それにほら、慣れって意味もあるから」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る