第190話
「大丈夫か?」
「……」
少女は、意識を取り戻したようだが虚ろな眼差しで静かに俺とリネラスを見ている。
これは、まさか……。
俺は後ろを振り返ると。
「もう大丈夫、冒険者ギルドが助けにきたからね」
リネラスの言葉に少女は虚ろな眼差しのまま、俺を見た後にリネラスを見て。
「冒険者ギルド……? お、おねえちゃんも助けてくれた?」
少女の言葉を聞いた俺は、誰の事か問いただそうとした所で、リネラスが手を翳して俺の行動を制止してきた。
そして少女は、気を失ってしまった。
「リネラス、この少女を知っているのか?」
俺の言葉にリネラスは頷いてくる。
「セイレスの妹のセインです。まさか、こんな小さな子まで」
「居た堪れないな、連れ去られた冒険者ギルド関係者の唯一の生存者か」
俺は溜息をつきながら兵士が戻ってきたら困ると思い、【探索】の魔法を再度発動させる。
そして気がつく。
まさかな……。
俺はすぐに小部屋から出ると【風刃】の魔法を発動させセイレスを釣り上げていた鎖を切り裂く。
「ユ、ユウマ!? どうしたんですか?」
「もしかしたら……セイレスを助ける事が出来るかもしれない!」
人間を構成する物質の中で、思考などを司りっており未だに解明されてない部分こそがニューロンだ。
俺の知識では、それを修復する術がない。
だから、死んだ場合は生き返らせる事が出来ない。
つまり逆を言えば、脳さえ無事なら!
俺は、倒れてきたセイレスを受け止めながら【肉体修復】の魔法を発動。
傷ついたその体を細胞単位で修復していく。
「ユ……ユウマ? い、一体なのを?」
俺とリネラスが見ている間にも四肢を失い体中に怪我を負ったセイレスの体が修復されていく。
そして……。
完全に肉体を修復された女性、セイレスはゆっくりと目を開けていく。
俺はその様子を見て溜息をついた。
まさか、呼吸が止まっていただけとは思わなかった。
それにしても……死んでいたら、リネラスや少女にどれだけの傷跡を残したのか想像すらできない。
「セイレス!」
リネラスがおんぶしていた少女を俺は引きうけて抱き抱えると、セイレスとリネラスは二人して抱き締め合って涙を流している。
俺は二人と見た後に、一つ重要な事に気がついた。
3人もいると俺が抱いて走って帰る訳にはいかないのだ。
また問題が発生してしまったな。
まぁ……それでも今は、この奇跡を喜ぼうじゃないか。
俺はリネラスとセイレスの二人を見て、そう思わずにはいられなかった。
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