第182話
「いや、話によると海の港町カレイドスコープからクルド公爵邸までは旅人が歩いても3日ほどの距離があるらしい。つまり、100キロメートルはある。そして3人のSランク冒険者がカレイドスコープに居た場合、昨日のウミゾーで逃げ出した事を考えると……まだクルド公爵邸には、到着してない可能性が非常に高い」
「でも、やっぱり私達が向かって到着する頃には到着しているよね?」
リネラスは、俺の説明に質問してくる。
それに対して、イノンは横でお茶を入れながらジッと聞いている。
「そこでだ! 今からクルド公爵邸を襲撃する。100キロメートル程度の距離ならすぐに踏破できる魔法があるからな!」
「そんな魔法が!?」
俺の言葉に驚いた声を上げたのはイノンであった。
俺は思わず「どうかしたのか?」とイノンに話しかけると「えっと……ううん。何でもないの」と歯切れの悪い返事を返してきた。
まぁ、何でもないなら別にいいんだが。
「それにしてもユウマの魔法は大概だと思っていたけど、本当に大概だったのね!」
リネラスは弾むような声で俺に話しかけてくる。
少しは俺の事を見直してくれたようだな! まぁ、出来る男は違うのだよ、出来る男はな!
――そして1時間後。
「そろそろ行くか?」
俺は、となりに立っているリネラスに話しかける。
話しかけられたリネラスは頷いてくる。
今回、リネラスが同伴する事になったのは、捕まってから日数も経過している女性セイレンの為だ。
助ける時に同性がいる方が安心できるというリネラスからのアドバイスからリネラスが参加する事になった。
「ユウマさん、私も一緒に行っていいですか?」
イノンが近づいてきながら聞いてくるが、命の覚悟を決めたリネラスと違って一般人には危険すぎるし何かあったら困る。
「駄目だ。イノンは留守番をしていてくれ。もしこちらの読み通り出なかった場合、相手の狙撃を得意とする冒険者と戦う可能性が出てくる。そうなったら何かあれば困るからな」
「まって! その言い方じゃ私がどうなっても良いみたいに聞こえるんだけど!?」
俺のセリフにリネラスが突っ込んでくる。
まったく、別にリネラスを盾に使うなんて一言も言ってないのに被害妄想もいい所だ。
「――そ、そんな!?」
まぁ、イノンは納得できないのかショックを受けているようだが……。
納得してもらうしかない。
「これは決定事項だ」
イノンは、俯いて納得してないようだが俺の決定事項という言葉に「分かりました」とだけ声が小さく答えてきた。
そして、いつの間にか横にいたリネラスが俺から距離を取って「それじゃユウマがんばってきてね!」と手の平をヒラヒラと動かして俺を送り出そうとしてくる。
俺はリネラスの腰に手をまわして体を持ち上げる。
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