第181話

「実はね……今日、町に買い忘れた物を買いに行ったんだけどね。その時に、町を海神が襲ってきたという話を聞いてね……よく町が無事でしたねって話したら海神は何者かに倒されたと聞いたの。で! それでね、その海神だけどね、海底ダンジョンから魔物が出て来ないように抑えている守り神なんだけど、ユウマは何か知らない?」

「知らないな。 第一、本当に倒したのか分からないんじゃないのか?」

「それでね、倒した人の特徴を聞いてたらね……黒髪の黒目の少年って言ってたんだけど、ユウマは何か知らない?」


 リネラスが俺を疑った視線で見てくる。

 

「何を言っているんだ! そんな決めつけたような言い方! 良くないとおもうぞ! 第一、俺が安易に自分の保身のためだけに魔法で!そんな事をするような人間に見えるか!? それに自分の魔力が海神を引き付けたと言う理由だけで何も考えずに倒すような真似をするとでも?」

「あ、うん……もう犯人分かったからいいよ……」

「マテマテ! リネラス、その目はなんだ? まるで俺の事を、犯罪者を見るようなその目は! 俺達は仲間だろう? つまり言わば一蓮托生というやつだ。そんな仲間を疑うような真似は良くないぞ?」

「えっと……誤解も何も、ユウマがさっき自分の魔力で海神が来たって証言していたから!」

 

 リネラスは腕を組んで俺をまっすぐに見ながら、追い詰めるように言って来た。

 つまり――。


「誘導尋問!?」

「ただの自爆だから!」


 まったく、謙遜してくれる。

 俺の言質をうまく利用してくるとは……さすがは、ギルドマスターなだけはあるな。

 くさってもタイじゃなくて、リネラスでもギルドマスターか。


「わかった。リネラスの言い分は理解した」

「そう……」

「ああ、リネラスの話は分かった。だから今回の問題は、追及はしない事としよう!」

 

 俺の言葉に2人とも驚いた顔をしているが、一体どうしたんだろうか?

 まったく……ウミゾーが来たのは確かに俺のせいかもしれないし、それによって町の一部が壊れたかもしれないが、そんな小さな事を問題にしていたら内乱状態のこの国では生きていけないだろうに。

 それに今回のウミゾー事件は、不可抗力。

 つまりノーカンだ!

 ――ということはだ……俺は悪くないという理論に辿りつく。


「さて、話をかえようか。そんな些細な会話をしている場合じゃないからな」

 

 俺は、町で仕入れてきた地図をカウンターの上に置きながら話す。

 そんな俺の様子に、リネラスは溜息をつくと近づいてきた。


「まぁ……いいけどね。きっと、あとでユウマが大変になると思うし……」

 

 リネラスが何か意味深な事を言っているが何を言っているのか俺には分からないな。

 何かあったら誰かに任せればいいだけだ。


「さて、それでは作戦会議を始めようか……」

「うん……いいけど、本当に大丈夫なの? 相手はSランク冒険者が3名もいるんだよね?」

  

 リネラスが俺を心配してくる。

 俺はそんなリネラスを見て地図を指さす。


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