第162話

 物理攻撃では効果薄いスライムに武器で挑んだ魔物は悉くスライムに吸収されてしまった。

 そして、スライムの大きさはすでに40メートルを超えていた。

 ズルズルと森の中を進みながら、正者の森から流れてきた魔物を食らって食らって食らって力にしていく。いつしか、青い色合いであったスライムの色は黄色く変化していた。


「……スラちゃん、色変わった?」

 スライムの上で寝そべっていたアリアは、ふと疑問に思った事を口にする。


「(……かなり前に進化したと言ったろうに。聞いてなかったのか?)」


「うん、聞いてなかった。お兄ちゃんの匂いを嗅いで道を探してたからね」


「(……アリアよ、貴様は人間なんだよな?)」


「何を言ってるんですか!?私くらい人間らしい人間なんていないですよ!失礼しちゃいます。そんな悪い子にはお兄ちゃん列伝外伝999話を聞かせる必要がありますね」


「(……どうやら遊んでる暇はないようだぞ?正者の森は我々を敵として認識したようだ。分かる範囲だけで1万というところか。ドラゴンゾンビやデーモンゾンビまで混じっているな)」


「倒して……」


「(……?)」


「スラちゃん!殲滅して!お兄ちゃんの匂いが腐臭で消えてるの。許さない、こいつらは許さない!!お兄ちゃんが言ってたアレを使うよ!」


「(……だ、だが、あれはユウマの魔力を極端に削るぞ?よいのか?)」


「スラちゃん、お兄ちゃんと私の仲を裂こうとするモノは敵なのです。正者の森が私たちを敵として認識した?違います。私達が敵として認識したのです」


「(……)」


「いいから早く!時間かかるんでしょう?」


「(……分かった。それでは攻撃に移る)」

 スライムが変形していき、体の中央部分が空洞になり穴が出来ていく。

 その穴の中に膨大な魔力が収束されていく。

 これはユウマと契約しているスライムにしか使えないトンデモ技。

 ユウマがネタに話していたのをアリアとスライムが完成された必殺技。

 その名も……。


「なぎ払えー。ファイナルスライーム」

 巨大な魔力収束砲が森を蒸発させ進行してきていたドラゴンゾンビやデーモンゾンビなどの古の強大な魔物の防御壁ですら瞬時に消し飛ばし本体を消滅させていく。

 ユゼウ王国とアルネ王国の中間で打ったその魔力収束砲は、ユウマ村を襲っていた後続である魔物を全て消し飛ばす。


「スラちゃんそのまま回転!」

 アリアの支持に魔力収束砲を維持したまま、スライムが魔力収束砲を横にずらしていく。

 それに伴い森が、魔物が次々と消し飛び消滅する。

 そして……森の中にはアリアとスライムを中心とした数十キロに及ぶ円形の地面がむき出しの地形が出来上がった。


 「(……さすがユウマの魔力と言ったところか。しかし……正者の森と死霊の森の大半が消し飛んでしまったな。これはスライム裁判になりかねんな)」


「やっぱりお兄ちゃんの力は偉大だね!さあ、なんとなく向こうな気がするから進みましょう」

 アリアの言葉にスライムは移動を始める。


「(……コイツは早くなんとかしないと……ユウマよ、アリアの暴走を止められるのはお前だけだぞ。女連れで旅をする事は無いと思うが、それだけはやめてくれ。世界が滅びるやも知れん)」

 二人の行き先にあるのは、ユゼウ王国のSランク冒険者10人と王に忠誠を誓った7人の騎士が守る最大最強の軍事都市であり民を圧制を敷くエルンペイア王が座する都市。

 

 その軍事力は類を見ないほど強大であり他国もおいそれと手が出せないものであった。




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