第四章

第163話

 フェンデイカ村から海の港町カレイドスコープまでは、国内情勢が安定している従来であれば定期馬車が出ており数日の距離であった。

 だが、現在ではユゼウ王国エルンペイア王が圧政を敷いている為に、流通経済は破綻・停滞しており、各地の領主が領民の移動をも禁止しているために定期馬車すら動いてはいない。

 そのために各町を結ぶ交通手段が現在、存在していない。

 ただ、例外が存在しておりエルンペイア王と懇意にしている商人や行商人は物資の流通を許可されており膨大な利益を享受しているとリネラスが歩きながら俺に講義している。


「なるほどな……つまりアレか? 独占販売状態になっているという事か」

 

 それは、かなりあくどいな。

 そう言ったやり方をするやつはちょっと許せないな!

 俺もアイテムボックスとか使えたら是非!やってやるところだ。

 むしろ絶対やりたいまである。


「はい、それで小さな村などはかなり大変なようです」

「なるほどな。しかし、まぁ……なんというか本当に酷い王様だな。俺が国民だったら即、王城を魔法で吹き飛ばしているところだぞ」


 まぁ、俺は国民じゃないからやらないけどな。

 自分の国の事は自分で何とかしないと意味がないと思うし。

 ユリーシャって奴が率いる解放軍があるなら、それに加わればいいだけの話だからな。


「それにしても、海の港町カレイドスコープまではどのくらいかかるんだ?」

「以前、宿屋を利用したお客様の話ですと、馬車で一週間くらいの距離と言っていましたよ?」

 

 俺の問いかけに、横に歩いていたイノンが答えてくる。


「あー! それ私も言おうとしたのに! イノンさんひどいですよー!」


 リネラスが顔を膨らませてイノンに抗議をしている。

 まあ、本気で怒っている訳ではないみたいだからじゃれ合っているような物なのだろう。

 フェンデイカ村から出てすでに4時間近く歩いているが、代わり映えのない草原だけが地平線の先まで続いている。

 さすがに見渡す限りの草原にはうんざりしてくるな。


「ユウマさん!」

「ん? どうしたんだ?」


 俺は、イノンの言葉に振り向く。

 すると、そこにはフェンデイカ村で俺が泊まったイノンの宿屋が大草原にポツーンと建っていた。


「……は?」


 俺は間抜けな声を上げてしまう。

 どうして、大草原の真っただ中にイノンが両親から受け継いだ宿屋が建っているのか不思議でならない。


「少し、宿屋に入って休憩しましょう」

「そうね、少し疲れたものね」

 

 イノンの言葉にリネラスが当然のように頷きながら宿屋に入っていく。


「おい、リネラス待て!」

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