第148話

「イーバンス子爵、貴様に言っておこう。この俺の敵になるなら手加減は一切せず全員殺す。だが、お前らにも家族はいるのだろう? 俺は戦う意志を持たない者は殺さないし殺すつもりもない。だから10分だけ時間をやる。貴様ら全員で相談しろ、その結果戦うなら俺は躊躇せず全員を屠る」


 俺は、それだけ伝えると壁に寄りかかった。

 するとイーバンス子爵は、青髪の眼帯をつけた男の下へ向かっていき話を始めたようだ。

 どうやらアイツが総指揮官のようだな。

 

 様子を見ているとイーバンスの首が宙を舞い地面に落ちた。

 それを見て、俺は眉元を顰める。

 子爵を殺すとか、何を考えているんだ?

 俺がまっすぐに青髪の男を見ていると男の指示により軍勢が一気に動き出す。


「イーバンス子爵は、姑息にもそこの魔法師に操られていた! 卑劣なその魔法師を打て!」


 男の言葉に大勢の兵士達の歓声が聞こえてくる。

 俺は溜息つきながら壁によりかかるのを止めて、兵士達を見据える。

 兵士達は一斉に俺に向かってくると槍を突き出してくる。

 俺は、その場に伏せながら右手を地面に手をつく。


 そして原子構成を、金属結合を行い刀を作り出す。

 それに伴い【身体強化】の魔法を発動させ限界まで引き上げる。


 そうして俺は右手に、練成し作り上げた柄から刃先までもが全てが金属で作られた10メートルを超す長刀を円を描くように振りきる。

 刃はつけていないが重量と遠心力に速度が加わりすさまじい破壊力となって戦場を爆風が吹き抜ける。

 戦場を吹き抜けた爆風により馬と兵士が空に舞い上がる。

 そして舞い上がった兵士達は地面に落下する。

 

「バ、バカな?……た、たった一振りで30人を?」と呟いている者もいる。

 俺はそれらを無視しながら、青髪の男に視線を向ける。


「おい、そこの青髪の奴。俺が先ほどイーバンス子爵に伝えた内容は聞いていたよな? どうして撤退しない? それに何故、奴を殺した?」


 俺の言葉を聞いた男は笑いだした。

 

「これは傑作です。マリウス、ラグルド、ヴァルドの元Sランク冒険者を殺した奴がこんなにも甘い人間だとは思っても見ませんでした」


 マリウスは知っているが他の2人は知らんな。

 他の2人も俺が殺したような言いがかりをつけられても困る。


「マリウスは殺したが、他の2人は知らん。貴様の勘違いではないのか?」

「勘違いではありません、もういいでしょう、殺れ!」


 周りを見渡すと無数の魔方陣が展開されていた。

 俺は、最大の力を持ってして長刀を円状に振る。

 それだけで巨大な風圧が発生し魔法を展開しようと俺を囲んでいた兵士達が吹き飛ばされ魔法が解除されていく。 

 魔法を強制的に解除された兵士達は驚愕の顔を俺に向けてきた。


「分かった。貴様は俺の敵でいいんだな?」

「敵でいい?私は最初からお前を殺すつもりだがな!」


 獲物を抜いた男の姿が消える。

 俺はとっさにその場から離れるが服の一部が切られていた。

 そんな俺に向けて突然、目の前に姿を現した男は口角を歪ませる。


「よく私の攻撃を避けられましたね」

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