第147話

「なんだ? 壁ができただと?」

「とまれ! ぶつかるぞ!」

「どうなっている? どこからこんなものが……」

「イーバンス子爵様、あの男が作ったようです!」

「あの男が? そんな馬鹿なことが!」


 最後の男が俺を見て叫んでいる。

 どうやら、イーバンス子爵と言うのがアイツらの軍の中では指揮官のようだな。

 ならば、目的を聞いてみるか?

 俺は、イーバンス子爵の方へ向けて歩いて近づく。

 近づかれた男たちは馬上から俺に槍を向けてくる。


「そこのイーバンス子爵とやら、お前らの目的を聞いてもいいか? これだけの軍勢を引いてきたのだ。何か目的でもあるのか?」

「我らは、ネレイド公爵家の元に集った軍勢だ。フェンデイカの村にエルンペイア王の治世に逆らう魔法師を討伐するためにこの地へ来た。かなり凶悪の魔法師らしく言葉が通じない者だと聞いている」


 ふむ。言葉が通じないか……。

 なら俺には関係ないな。


「そうか、俺もそんなに凶悪な奴がいるとは……」


 まぁ、俺の探索魔法にも限界があるからな。

 俺が敵と判断しない以上、敵性色である赤では表示されないから仕方ない、そう仕方無いんだ。

 そういえばソイツの名前を聞いていなかったな。


「それで、その凶悪な魔法師の名前は何て言うんだ?」

「ああ、ソイツの名前はユウマと言う魔法師らしい」

「ふむ……ソイツの名前なら聞いた事があるな」


 俺の言葉に騎馬兵達がざわつく。

 

「どこにいるか教えてもらってもいいか?魔法師殿」

「ああ、この俺だ。俺の名前がユウマと言う。一応、言葉は通じるつもりだったんだが極めて遺憾だな」


 俺の言葉に騎馬兵達の顔色が変わる。

 まったくざわついたり顔色を変えたり忙しい奴らだな。

「イーバンス子爵。騙されているのではないか? 俺はお前らの敵ではないぞ? 無益は殺生は好まないからな。 俺が殺したマリウスって奴だったか? 民を守る騎士団のくせに村人を殺し奴隷にし民に対して暴挙をする奴らが正義だとは俺には到底思えないんだが、そのへんはどうおもうんだ?」


 俺の言葉に兵士達はどうしたらいいかという顔をイーバンス子爵へ向けている。

 俺としては問答無用で攻撃してきてくれた方が楽でいいんだが、迷われるようだと逆にこちらも困るんだがな。

 手加減もしないといけなくなるし……。


「貴様の言い分は分かった。だが、ユウマとやら! 貴様はネレイド公爵家の軍に手を上げたのだろう? 貴族に平民が逆らう事は重罪だと理解していないのか?」

「ん? 何を言っているんだ? 貴族だろうが国王だろうが、俺に危害を加えるなら等しく敵だろう? もっと言わせてもらえば、お前ら貴族は民の納税した食物を口にしているんだぞ? 本来ならばお前らの方が民に対して心を砕くのが筋だろうに。それが逆らう事が重罪だと? おいおい、寝ぼけるなよ? いつから貴族はそんなに偉くなったんだ? 貴族の義務も果たさない奴を生かしておく意味があるのか? 相手に危害を加えるつもりなら自分も同じ事をされる可能性があると何故理解しない?」

 

 俺がイーバンスと話をしている間にも兵士が集まってくる。

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