第三章

第105話

 村を出てからすでに2週間が経過していた。

 俺は大木に体を預けながら浅い睡眠をとり続けながら森の中をひたすら歩いた。

 自分が今どこにいるかすら定かではなかった。

 森の中を、ただ木々の間を陽光が降り注ぐ中を俺はひたすら歩いた。


 想像以上に、いや……本当に何もない森。

 動物がまったく存在いない。

 生き物の気配がない森の中を俺は歩き続けている。

 

 ここ一週間は何も口にしてない事からかなり体は限界を感じている。

 だが、俺が生きている事で妹のアリアに向かう目を誤魔化せるなら安いものだ。


 体はまだ動く。

 思考も混濁はしていない。

 まだ、大丈夫だ。


 俺は歩きながら脚がもつれる。

 そして……俺の意識が途切れるところで女の声が聞こえた。

 だが、自分が気がつかないうちに肉体の限界が来ていたのだろう。

 半分意識が混濁してる状態で俺は……。


「コーク爺!森の中で倒れてる奴見つけて連れてきたんだが見てくれないか?」

 女の声で俺は、うっすらと瞼を開けたが力が入らない。


「どうしたんじゃ?こんな朝早くから……これはひどい」

 コーク爺と呼ばれた初老の男性は、運び込まれた成人前と思われる少年を見て眉を潜めた。

 一目で栄養失調と分かるほど少年の体は衰弱していた。


「エルス、すぐに何か体にいい物を用意しなさい」


「分かった」

 エルスは、すぐに麦粥を作るために素材を用意する。


「……これは……」

 コークは少年の額に手を当てながら診察をしていくとある事に気がつく。


「この少年は一週間以上、食事を取ってないな……」


「どういうことだ?」

 食材を煮込んでいる間、様子を見にきたエルスはコークの話を聞いて疑問に思い口を挟んだ。


「……この者、この国の者ではない可能性がある。もしかしたら死霊の森を超えてきた可能性もあるかもしれん。」

 俺は、目をつぶったまま老人の話を聞く。


「事情なんて人それぞれだろ?ユゼウ王国だって今は、内戦状態なんだ。五体満足でいられるだけでマシってもんだよ」


「そうかも知れんな」


「コーク爺、リーダーが魔法師に伝があるかどうか聞いてきたけど伝とかやっぱないよな?」


「魔法師は攻撃魔法が使える魔法師じゃろう?そんな者がいるわけがなかろう。第一居たとしても魔法発動の触媒が高すぎて使い物にならん。どこの国もそれを理解してるからこそ攻撃魔法師を運用してないんじゃからな」


「―――冒険者は使っているけどな」

 エルスは、コーク爺と呼ばれた人間に皮肉を言っている。

 それにしても初めて知ったな……。

 だけど、俺の魔法は普通とは違うからな……。

 俺が考えてる間にも二人の話は続いていく。

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