第二章 幕間 司祭ウカル
第99話
エルアル大陸の最南端に位置するアルネ王国。
その北東、イルスーカ侯爵領の最北部に位置するアライ村は長い歴史を持つ村ではない。
そもそもこのエルアル大陸自体、人類史にとって長い歴史を持っていないのだ。
我々の先祖は、海を隔てた先にある巨大大陸にある海洋国家から来たと言われている。
何でも自分たちの国を興すために新たに見つかったこの大陸を目指したとされているが真偽は定かではない。
私は、孤児院の出身であった。
アルネ王国の国境であるアース神教が経営する孤児院では、私のように戦乱で身内を亡くした身寄りの無い子供ばかりが住んでいた。
将来のためにとアース神教孤児院では読み書きに魔法を戦争孤児に教えていた。
その中でいつか裕福な生活が送りたいと私は必死に勉学に励む。
幸いな事に私には魔法の特技を保有していたらしく魔法に適正があった。
魔法は大気のエネルギーに干渉し、そのエネルギーに命令を与えて発動させる物である
触媒、体内の魔力制御、魔方陣、そして詠唱どれが欠けても魔法は使う事はできない。
触媒は迷宮からのみ産出される魔法銀と呼ばれる特殊な粉末を使うために極めて高価であり、攻撃に使われる事は無く治療目的に使われていた。
だが、誰もが治療を受けられるわけではなかった。
アース神教の司祭見習いを終えた翌年、私の赴任先が決まる。
それは魔物との最前線、イルスーカ侯爵領の防衛拠点であった。
防衛拠点に私が赴任させられたのには理由がある。
私には少量の魔法銀で治療魔法が使う事が出来たからだ。
教会の命令という事もあり私は防衛拠点に向かう。
道中いくつもの村や町を通り見てきた。
戦争が終結し数年が経過していたにも関わらず、その爪あとは酷いものであった。
アルネ王国全土で飢饉や疫病が蔓延し、魔物の襲撃や自然災害が起きている。
その中でも正者の森と呼ばれる場所にもっとも近い防衛拠点は、国を守る上で重要な要だと言われていた。
つねに魔物が襲ってくる危険な場所らしい。
どれほど危険な場所なのだろうか?
考えるだけで恐ろしい。
防衛拠点に到着した私を出迎えたのは魔物の群れであった。
正者の森から流れこんだスケルトン、レイス、グール、ゾンビなど負の生き物が押し寄せてきておりアルネ王国軍と冒険者ギルドが戦っていた。
まるで戦場、それが私が赴任先に抱いた最初の印象であった。
司祭の仕事は、説法を説いたり住民の悩みを聞き相談に乗り住民名簿作成や租税管理が主な仕事であったが……赴任先では、そのような仕事は一切なかった。
私に求められたのは、魔法銀を使っての治療……ただそれだけ。
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