第93話

「お前は、誰かに操られただけの存在かも知れない。だが破壊工作をするのは見過ごしてはおけない!恨むなら主を恨むんだ!」

 俺の言葉に、粘液の化け物は教会から離れて俺に近づいてくる。

 ピギーピギーと何やら抗議をしてきているが、そんな事で俺が許すとでも思っているなら大間違いだ。

 教会を覆うほどの粘液の化け物は脅威になる。生かしておたらいけない。

 だから心を鬼にして《火炎旋風》の魔法を発動させた。

 巨大な炎の竜巻が教会を飲み込んで捕食していた粘液の化け物を悉く焼きつくしていき蒸発させていく。それに伴い《探索》の魔法で調べるが俺の光点に似せられた光点も急速に減っていくのが分かる。やはり俺の魔力に同期するように作られた存在だったのかも知れない。

 ウラヌス十字軍、恐るべき組織だ。

 

「おにいちゃん!だめえええええええ」

 最後の一欠けらまで燃やし尽くそうとした所で、妹が走ってきて大声で叫んできた。

 俺は妹の声を聞いて魔法発動を思わず中断してしまった。


「だめだよ!その子は……」

 妹が泣きそうな顔で俺に何かを訴えかけようとしている。

 俺は頷きながら妹に近づく。


「その子は、おにいちゃんが作ったスライムさんで使い魔さんになりたいだけなの!」

 妹の大声が周囲に響き渡った。

 そして周囲にはいつの間にかこの大惨事を引き起こした粘液の化け物を討伐しようとしている俺を見に来ていた村人で溢れていた。

 村人と俺の視線の先には、粘液の化け物と言えないくらいまで小さくなった俺が見知った存在のスライムが居た。


「な、なんだと?俺が作っただと?」

 俺の言葉に妹のアリアが頷いてくるが……。

 一連の騒ぎが俺のせいだった事が判明した事で、俺へ注がれる村人の視線が冷たい。

 さらに妹は語ってくる。

 

「うん、スライムさんが言っていたの。労働契約を結ばないのに仕事をさせるなんて酷いって……」


「アリア。もしかして……スライムの声が聞こえるとか、そんなファンタジーが起きてるのか?もうすぐ12歳になるんだぞ?そういうのは……」

 そう俺が呟くとウカル司祭様が話しかけてきた。


「ユウマ君。もしかしたら妹さんはモンスターを従属させる為の力を持っているのかも知れません。っというかユウマ君は、スライムと契約しなかったんですか?してくださいって説明しましたよね?


スライムを作ったら主従契約を結ぶのは、アルネ王国の法で決まっているのです。そうしないと彼らは死んでしまいますし襲いかかってくるのですから。


とりあえずユウマ君がスライムと話せないとなるとテイマーの才能はないのでしょう。どちらにしてもスライムと契約をしたほうがいいですね」

 ウカル司祭様の言葉に頷きながらスライムに近づくと。


「お兄ちゃん、この子がね……何度も契約してって頼んだのに暴力を振るった人を雇用主としては認めないって……」

 そ、そうか……。

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