第90話

「たしかにこれだけの設備を村が管理していたら問題になりますね。それならアース神教風呂とすれば他の村や町から批判されにくいでしょう。わかりました、ユウマ君の心意気を汲み取って教会が管理しましょう」


「ありがとうございます。あと一つ問題がありまして浄化設備を作りたいと思っているんですが、何かいい案とかありませんか?」

 俺の言葉にウカル様は頭を傾げる。


「浄化設備とはなんだい?」

 俺はウカル司祭様の話を聞いた後。


「実は、入浴時の人体から出る汚れを除去する方法についていい案が無いかと思いまして」

 俺の言葉にウカル司祭様は思案顔をした後に口を開いた。


「そういえば貴族は、お風呂場やゴミを調教したスライムに処理させていると聞いた事があるよ……あ。そういえば、アライ村に派遣される前にアース教会本部からスライムの種というのを貰った気がするよ。良かったらあげようか?」

 俺は即、頷く。

 ウカル司祭様と一緒に、教会をつぶした後に出た私物をまとめて突っ込んだ掘立小屋の中を

調べていく。



「ユウマ君!あったよ!」

 振り向くと、ウカル司祭様が透明な瓶に入った種を差し出してきた。

 俺は、瓶を受け取る。

 蓋を開けて5センチほどの緑色の種を掌に乗せる。


「ユウマ君、スライムの種は初めて魔力をもらったものとパスを繋いで、そのあとに契約をするんだ。種の状態から孵化させるには魔力が必要だけど……」

 ウカル様の言葉を聞きながら魔力の半分ほどを種にいれると卵が割れたような音とともに10センチほどの緑色のスライムが姿を現した。


「いいかい!くれぐれもユウマ君の魔力は強大なんだから、そそぐ魔力の量は極少量で行ってね」

 ウカル様が話している間に、スライムを排水溝に設置する。

 ふむ。これで大丈夫かな。


「それでは俺は、看板を作ってきますのでウカル様は村の皆に連絡を回してくださいますか?」


「任せておきなさい」

 ウカル様は頷くと村長の家の方ではなく村民の家が集まっている方へ向かっていった。

 そして俺も看板の作成に取り掛かった。

 露天風呂の壁を作るときにあまった木材を看板風に加工した後に、蝋石で『アース神教公認露天風呂』と書いた。

 あとは入り口の上に設置して完成だ。

 看板を設置してから10分ほどするとウカル様が走って戻ってきた。


「やあユウマ君、村の皆には話しは通したからもう大丈夫だよ?君が工事したってことを伝えておいたから、これで村の皆も君を見直すはずだよ」

 さすがウカル様だ。

 俺が何を狙って露天風呂を作ったのか分かっていたみたいだ。 


「それじゃ、俺は教会の改修に戻りますので後はよろしくお願いします」

 さて俺も残りの仕事をさっさと終わらせよう。

 明日の夕方までには教会が完成してればいいな。

 そんな事を考えていると――。



「……ピギィ」

 ――と教会へ向かおうとした所で何かの声が聞こえた。

 それは排水溝からな気がした。

 じっと聞き耳を立てていると特に続けて声が聞こえてくることはなかった。

 どうやら俺の気のせいらしい。

 俺が作ったスライムが暴走して建物を破壊するとかそんな事あるわけないしな!

 


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