第88話

「ユウマ君、どこに行っていたんですか?もうすぐ教会は完成するんですよね?早く仕上げてください。あと数日でエメラダ様から話を聞いた大司教様が、ここの村に視察にこられるのです」


「一体いつ、そんな話が?」

 ウカル司祭様が俺を見ながら言葉を続けてくる。


「ユウマ君が、教会から離れていた間に早馬で書簡が届いてね?だから早く仕上げてくださいね」

 ウカル様はそれだけ言うと仮寝床としている村長の家に帰っていった。

 俺は《認識阻害》の魔法を発動させて建物の全容を誤魔化している教会を見上げた。


「ふふふふ」

 俺は、村の皆への意趣返しのために作った教会を見て笑う。

 

 俺が作った教会。

 その原型となったウエストミン○ター寺院を忠実に再現した代物。

 

 土地だけは教会の周りに有り余っていたから出来た代物だが、高さは70メートルもあり大聖堂は奥行きと横共に60メートルで設計して作った。

 これだけの巨大な建造物なら、王都を本拠地とするアース神教の教会本部は見た事はないが引けは取らないはず。

 



 露天風呂が出来た事を村の皆に伝えようとしたが、俺一人の力では時間がかかりすぎる。

 それで俺はウカル様の情報網を頼ることにした。

 たしかウカル様は、教会の集会をする時、村人全員に連絡が行き渡る方法を構築していたはず。


 村長の家の扉を何度も叩く。

 ユウマ露天風呂開店まで時間がないのだ。

 一日置くと、村の皆が発見してインパクトが欠けてしまう。

 そうすると村の皆の俺に対する好感度が上がりにくくなる。

 それはいけない。

 せっかく作った物を最高の状態で提供する事こそエンターテイメントではないか!

 そしてそれは俺の高評価にも繋がるのだ。


「どなたですか?」

 ウカル様が村長の家から出てきて俺を見てきた。


「ユウマ君、どうかしたんですか?もしかして教会が完成したんですか?」

 俺は頭を振る。

 まだ最後の仕上げが残っているが1日あれば終わる所だ。


「実はウカル様にお願いがありまして……」


「ユウマ君のお願いですか……また何か問題を起こしたりするとかはないですよね?」

 ウカル様は俺のことを問題児か何かと勘違いしてるようだ。

 俺はこんなにウカル様派なのに!


「大丈夫です。俺は人に迷惑をかけない事をモットーに生きていますから」


「……あ、うん」

 歯切れが悪い答えに心配になってしまう。

 どこか体の具合が悪いのだろうか?

 でも表情を見る限り特に問題は無さそうにみえる。

 きっと精神的な物に違いないんだろう。

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